ワーキングメモリは、何かの作業や動作をする際、情報を一時的に記憶しておく能力のこと。日常生活のあらゆる場面で必要になってきます。発達障害の子どもにはワーキングメモリが低い子がいて、日常生活だけでなく勉強面にも困難さがあります。
ワーキングメモリの低い子どもが学力を上げるには勉強法を工夫し、自分に合った教材を選ぶことが大切です。発達障害の子どもには、パソコン・タブレット教材が適していると言われていますが「スマイルゼミ」はどうなのでしょうか。実際に使った人の感想を交えて考えていきたいと思います。
目次
1. スマイルゼミってどんな教材?
株式会社ジャストシステムが提供している「スマイルゼミ」は、ノートサイズの専用タブレットにデジタルペンで書いて学習を進めていきます。タッチしながら理解を深めていける授業はわかりやすいと評判です。学校で使っている教科書と授業の進度に合わせ、毎月決まった分量が配信されます。定期テストの範囲を設定すれば、苦手なポイントを重点的に学べるためしっかりとテスト対策ができます。勉強した分だけ遊べるゲームがあるなど、子どもは「自分専用のタブレット」という感覚を持ちやすいのも特長です。
スマイルゼミの基本情報
- 対象学年:小学1年生~中学3年生
- 教科:国語・算数・英語(小学1年生~2年生)、国語・算数(数学)・理科・社会・英語(小学3年生~中学3年生)
- 価格:月額3,600円~7,980円(学年によって異なる。タブレット代別途9,980円(1年間の継続利用が前提))
- 学習端末:専用タブレット
- 保護者用画面:あり
スマイルゼミの勉強の流れ
学校で採用されている教科書と授業の進度に合わせて、毎月決まった分量が配信されます。講義のあと、数問の問題が出てきます。通常の講義のほかに「漢検ドリル」と「計算ドリル」もあります。
2. ワーキングメモリの低い子どもがスマイルゼミを使ってみた感想
スマイルゼミを始めたのは注意欠陥多動性障害(ADHD)の小学3年生のHくん。スマイルゼミを使ってみてどうだったのか、保護者の方に聞いてみました。
小学3年生。ADHDの診断を受けており注意力が散漫。何かに気をとられると、やっていたことを忘れてしまう。
ワーキングメモリとは…
情報を一時的に記憶しておく能力のことで、生活のあらゆる場面で必要なものです。たとえば人と会話するときも、相手が話したことを一時的に記憶したうえで言葉を発することで、会話が成り立っています。
発達障害の子どもはこのワーキングメモリの容量が低い傾向にあり、授業の内容が頭に入ってこない、習ったことをすぐに忘れてしまう、ノートを取るのが遅くなってしまう、文章を読んでも理解できない、考えたことを書く前に忘れてしまうなど、さまざまな勉強の障害を抱えています。
2-1. ワーキングメモリの低い子どもにスマイルゼミが良かった点
・図や動画がきれいでわかりやすい
「スマイルゼミ」の講義は、イラストや図を多く使用しており、わかりやすいのが特長です。内容を視覚的に捉えることで、記憶定着の手助けになります。
「息子はWISC-Ⅳで視覚優位であると言われています。そのため、絵や図で見て学べる「スマイルゼミ」の講義は、合っているように思います。とくに英語は、かわいい動物のイラストがたくさん使われていて気に入っているようです」
保護者のコメント
・画面上にメモができる
すべての講義ではありませんが、「スマイルゼミ」には、画面上にメモができる機能があります。ワーキングメモリの低い子どもは、問題を解いている最中にも内容を忘れていってしまう傾向があり、この機能が役立ちます。
「画面上にタッチペンでメモ書きできる機能はいいですね。息子が一人で解けないときに、私がそこにヒントを書くようにしています」
保護者のコメント
・漢字ドリルと計算ドリルがある
「スマイルゼミ」には、講義の他に「漢検ドリル」と「計算ドリル」があります。学習内容を短期記憶から長期記憶化していくためには、たくさんの問題を解くことが必要です。シンプルな漢字問題と計算問題をたくさん解くことで、問題の解き方を覚えていくことができます。
「息子は読解力を問うような問題が苦手で、文章題を解くことを嫌がります。その反面、計算問題が好きなようです。何度も繰り返し解くことで、だんだん計算が速くなってきました」
保護者のコメント
2-2. ワーキングメモリの低い子どもにスマイルゼミが良くなかった点
・さかのぼり学習できる範囲に限りがある
ワーキングメモリの低い子どもは、一度学習した内容もすぐに忘れてしまいます。そのため、学年が上がっても、前に学年の内容にさかのぼって学び直す必要が出てきます。「スマイルゼミ」は、受講開始月より前に戻って学習することはできません。それ以前の学習ができないのは物足りない点と言えます。
「最近受講を始めたため、それ以前の内容が見られないのが前年でした。有料でも良いので、過去の学年のものが勉強できるといいのですが……」
保護者のコメント
・出題形式が変わらない
「スマイルゼミ」では、講義の後に数問の問題を解くドリルが始まります。繰り返し学ぶことができるのですが、この問題は何度やっても変わりません。そのため、答えを覚えてしまう可能性があり、応用力がつきません。
「問題の数もそれほど多くなく、出題形式も同じなので、息子は答えを暗記してしまったようです。そのため、テストで類似問題が出たのですが、正解できませんでした。本当に理解できているかを問うような、さまざまな出題形式で学べる教材のほうが良いと思います」
保護者のコメント
・講義の音声が淡々としている
「スマイルゼミ」の講義には、キャラクターがほとんど登場しません。音声は、淡々とアナウンスするような口調で進んでいきます。また、BGMもなく、基本的に静かな中で学んでいきます。そのため、他のパソコン・タブレット教材にあるような楽しい雰囲気は感じづらいかもしれません。
「他のパソコン・タブレット教材も試したことがあるのですが、それと比べて、子どもがワクワクするような雰囲気はないように思います。息子は、音声からも刺激を受けて勉強に集中していくため、静かな中で問題を解くと飽きてしまうようです」
保護者のコメント
3. スマイルゼミまとめ
このように、「スマイルゼミ」は、子どもが勉強に集中できる工夫が凝らされた教材で、じっくり取り組むことができれば学力を上げることができると思われます。ただ、発達障害でワーキングメモリの低い子どもには、応用力がつきにくかったり、音声が淡々としすぎていたりと不十分な点も多いようです。