発達障害の子どもの中には、読み書きに障害のある子どもが多くいます。
教科書を読んだり、ノートを取ったり、テスト用紙に記入したり……
読み書きは勉強のベースともいえるもの。
そのため、読み書きに障害のある子どもは、通常の勉強法では学力を上げることが難しいのです。
しかし、その子に合った方法を選び、繰り返し学んでいくことで、成果を上げることはできます。
読み書きに障害のある子どもはどのように勉強すればよいか、その方法を考えていきましょう。
目次
1. “読み書き障害”にもいくつかの種類がある
発達障害は脳機能の障害です。
読み書き障害も、この脳の問題が原因で引き起こされています。
「読む」、「書く」という動作をするためには、さまざまな感覚が使われており、脳のどの機能に問題があるかによって、困難の現れ方が異なります。
さまざまな読み書き障害を見ていきましょう。
1-1 「聞く」ことに障害がある
聞くことに障害があるため、“読み書き障害”が起こることもあります。
通常、私たちの耳は、いろいろな物音の中から人の声を聞き分けることができます。
また、その声を「言葉」として聞き取り、それを文字として表すことができます。
自分の知らない外国語を聞いたとき、言葉を聞いて文字で表すことができないように、聴覚に問題のある子どもは、聞き取りがうまくできないことがあるのです。
聞くことに障害があると、聞いた言葉を書き写すことができません。
そのため、授業のノートを取ることが難しく、勉強に支障が出るのです。
1-2 「読む」ことに障害がある
たとえば、パソコンで打った<あき>という文字も、手書きの<あき>という文字も、通常はその文字を読むことができ、同じ文字だと認識することができます。
この過程は、「文字として認識すること」、「音韻に変換すること」、「意味を検索すること」というプロセスを経ています。
このどこかの過程に障害があると、読みが困難になります。
視覚認知に困難がある場合、パソコンの文字と手書きの文字を同じと捉えられないなど、文字の形の分析が難しくなります。
その結果、意味を検索することができず、文章をすらすら読めなくなり、一字ずつ読む“遂字読み”となってしまう傾向があります。
そのため、文章から意味を読み解くことができません。
1-3 「書く」ことに障害がある
文字を書く際、心の中で書く内容(意味)を思い浮かべ、そして書きはじめます。
意味から文字の形を思い浮かべ、そして書くというプロセスは、文字を読むことと逆のプロセスといえます。
文字の形を認識する力が弱いと、書き間違えが多かったり、左右反転文字を書いてしまったりすることが多くなる傾向があります。
また、「きゃ」、「きゅ」、「きょ」などの拗音が、一つの音であるということが理解できず書き漏れてしまったり、濁音や促音、長音などの特殊音節が理解できなかったりすることもあります。
1-4 WISC検査で傾向を知ろう
読み書き障害の子どもの勉強法を考えるうえで、障害の傾向を知ることは大切です。
そのためには、発達障害の診断によく用いられる知能検査「WISC」を受けるのがよいでしょう。
WISCでは、「言語理解」、「知覚推理」、「処理速度」、「ワーキングメモリ」の4つの指標で診断します。
それぞれの概要は以下の通りです。
「言語理解」
語彙力や言語知識、その知識を状況に合わせて応用しながら使う能力を評価。
「知覚推理」
視覚的な情報を取り込み、各部分を関連づけて全体を推測する能力を評価。
「処理速度」
視覚的な情報をすぐに認知し、事務的に、正確に数多く処理していく能力を評価。
「ワーキングメモリ」
聴覚的な情報に注意を傾け、一時的に正確に記憶しておく能力を評価。
4つの指標の得点から全検査IQが算出されます。
この診断結果を検査員から聞く際、子どもの苦手な感覚、得意な感覚を教えてもらうことができるでしょう。
得意な感覚を伸ばす勉強法こそが、子どもに合った勉強法となります。
2. 読み書きが苦手でも勉強はできる!
多くの保護者は、「まずは読み書きができるようにしてあげなければ」と考えます。
確かに、読み書きの力を少しでも伸ばしてあげることは、子どもの将来のためには必要です。
読み書き支援のための教材はいろいろなものが出ていますので、それらを活用してみてください。
一方、各教科の勉強は、それとは別で進めていく必要があります。
苦手な読み書きのトレーニングだけが「勉強」だと思うと、勉強そのものを嫌いになってしまう可能性があります。
読み書きが苦手でも、知識を得ていくことの喜びや、問題が解けたときの達成感を感じさせてあげることが子どもを勉強好きにさせ、学力アップにつながるのです。
2-1 得意な感覚を生かした勉強法
それでは、読み書きが苦手な子どもは、どうやって勉強していけばよいのでしょうか。
ポイントは、得意な感覚を使って勉強していくこと、もしくは苦手な感覚を使わずに勉強していくことです。
WISCの結果や専門家の診断を参考に、勉強法を考えましょう。
聴覚認知が特に弱い場合(視覚優位の場合)
視覚を使った勉強法がおすすめです。
見て覚えることが得意なので、絵や図などを使った教材が有効です。
また、教科書やノートの重要な箇所は色を使って目立たせたり、絵と一緒に暗記したりするような方法が良いでしょう。
視覚認知が特に弱い場合(聴覚優位の場合)
聴覚を使った勉強法がおすすめです。
リスニングや復唱が得意なため、音声を使った教材が有効です。声を出して教科書を音読したり、歌にして暗記したりすると良いでしょう。
また、授業の音声を録音して、あとで何度も聞きなおすなど、苦手を補う勉強も効果的です。
「書くこと」は、パソコン入力や、音声入力などを使うことでカバーしていくこともできます。
2-2 パソコン・タブレット教材を試してみよう
読み書きが苦手な子どもには、パソコンやタブレットを使った教材(eラーニング教材)が効果を発揮することがあります。
「WISC」の診断者からも注目されており、得意な感覚を生かして勉強できるといわれています。
パソコンやタブレットを使った教材(eラーニング教材)には、どんな特徴があるのでしょうか。
視覚・聴覚を使って勉強できる
パソコン・タブレット教材は、動画や音声を多用し、ゲームのように楽しみながら学習できるのが特徴です。視覚優位、聴覚優位の子どもに適しているといえます。
読み書きの勉強もサポートできる
すべてのパソコン・タブレット教材にいえることではありませんが、中には読み書きの勉強をサポートしながら国語の勉強ができるものもあります。
たとえば、オンライン学習教材「すらら」なら、文章をハイライトしながら読み上げ、文章の基本を学んでいきます。
逐字読み(文章を1字ずつ区切って読んでしまうこと)してしまう子どもにも区切りがわかりやすくなり、内容理解を助けます。
「り・ん・ご・は・あ・か・い・で・す」と1字ずつ読んでしまう子も、色分けされることで理解しやすくなります。
パソコン・タブレット教材は、発達障害の子どもの勉強に適した特徴がたくさんあります。
・多動の症状があり集中力が持続しない子どもでも、楽しみながら取り組めるので集中しやすくなる
・自分のペースで勉強できるので、集団授業についていけない子でも問題なく学べる
・繰り返し勉強できるので、ワーキングメモリが弱い子どもの記憶の定着を助ける
3. まとめ
読み書き障害のある子どもでも、学び方を工夫し、適した教材を選ぶことで確実に勉強の成果を上げていくことができます。
学ぶ楽しさを感じさせてあげ、勉強への意欲を育ててあげてください!