「勉強にはいっさいヤル気を見せない」、「どんな教材を見せてもまったく興味を示さない」、「勉強しても無駄だと考えている」など、発達障害の子どもの勉強への無関心に頭を悩ませる保護者も多いようです。
勉強に対して拒絶反応を起こす子のヤル気を引き出すにはどうしたらいいのか。その方法をご紹介します。
目次
1. 勉強にどのような支障が出ているか把握する
発達障害の子が勉強に対して苦手意識を持つのは、本人が怠け者だからというわけでは決してありません。
そこには、本人の抱える障害が関わっています。
その点を考慮せずに、「勉強しなさい!」と叱ってしまうと、余計にヤル気を失わせ、勉強への拒絶が強くなってしまう可能性があります。
大切なのは、本人の障害が勉強にどのような影響を与えているかを理解し、対策を一緒に考えること。
子どもが一人で解決策を考えて実行することはできませんので、保護者が手を差し伸べる必要があります。
<発達障害による勉強への支障の例>
自閉スペクトラム症(ASD)
- こだわりが強く、興味のあるものにしか集中できない
- 人との関わりが苦手で集団授業・グループワークについていけない
- 想像力が乏しく、推論するような問題が解けない
- 融通が利かず、突然指名されたり、抜き打ちテストがあったりするとパニックになる
注意欠陥多動性障害(ADHD)
- 机に落ち着いて座っていられず、席を立ってしまう
- 手や足をいつも動かしたり、物音を立てたりする
- 授業中におしゃべりしたり、他の生徒の邪魔をしたりする
- 整理整頓が苦手で机が散らかり、勉強に集中できない
- 忘れ物が多く、授業に必要なものを持ってこない
- 宿題が出たことをすぐに忘れてしまう
学習障害(LD)
- 文字を読むことが苦手
- 文字を書くことが苦手
- 推論することが苦手
- 算数の概念が理解できない(繰り上がりや繰り下がりの計算が理解できないなど)
2. 「勉強ができない」と「ヤル気がない」は違う
このように、発達障害の子どもはその障害ゆえに、勉強にさまざまな支障が出てしまいます。
しかし、「勉強ができない」ということと、「ヤル気がない」というのは根本的に違います。
たとえ成績が悪くても、勉強に前向きな子もいます。
ここでは、子どもが勉強へのヤル気をなくしてしまう理由を考えていきましょう。
2-1 理由①勉強がわからない
テストの問題が解けなかったり、学校の授業についていけなかったり、勉強がわからない状態が続くと、誰でも自信を失ってしまいます。
すると、「どうせ勉強しても無駄なんだ」とヤル気を失ってしまうのです。
反対に「わかった!」という感覚は、自信につながり、もっと勉強したいという気持ちを抱かせます。
→解決策
勉強がわからないなら、わかる問題を解かせることが大切です。
学校の授業についていけない場合は、過去の学年にさかのぼって、わかるところから勉強し、少しずつ知識を積み上げていきましょう。教科ごとに得意・不得意がある場合は、各教科それぞれ、その子のレベルに合った勉強をさせる必要があります。
1つの教科でも、たとえば算数なら、計算は得意だけど図形がわからないというように、ムラがあることも多いでしょう。
分野ごとにレベルを調整する必要があります。
発達障害の子どもには、学年の枠を越えて自由に勉強できる「無学年方式」が合っています。
また、目標を細かく設定することも有効です。
たとえば“ドリルを1ページ”とか“漢字を3つ覚える”という風に、すぐにクリアできる目標にして達成感を感じさせるようにしましょう。
「わかった!」、「できた!」を積み上げていくことが、勉強のヤル気へとつながります。
2-2 理由②勉強がつまらない
勉強がつまらないため、ヤル気が出ないというケースも多いでしょう。こだわりの強いASDの子どもは、自分の興味のあること以外に集中することはなかなかできません。
また、多動・衝動の症状のあるADHDの子どもも、より刺激が強いものに興味が移る傾向があるため、無味乾燥な学習には集中できないことがよくあります。
→解決策
勉強自体を「楽しいもの」、「面白いもの」と感じられるような工夫が必要です。
アニメやゲームが好きな子どもなら、パソコンやタブレットで学ぶeラーニングの教材を使うのもおすすめです。
ゲームやクイズのような形式で問題を出題する、大きな声で教科書を読む、歌いながら九九を覚えるといった方法など、本人が楽しめるものを見つけましょう。
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2-3 理由③勉強してもいいことがない
勉強しても何もいいことがないと思っているため、モチベーションが上がらないケースもあるでしょう。
「勉強しても意味が無い」、「勉強するのが面倒だ」と投げやりになっており、どんな勉強をやらせても無気力ですぐに投げ出してしまいます。
「理由①勉強がわからない」、「理由②勉強がつまらない」といった状況が続いたため、この状況に陥ってしまっている可能性もあります。
→解決策
「勉強するといいことがある」と感じさせてあげる必要があります。
一番大切なのは、褒めてあげること。子どもが勉強していたら、できるだけ間を空けずに「えらいね」、「すごいね」と声をかけてあげましょう。
テストの点数が上がったり、できなかった問題が解けたりしたときも、ぜひたくさん褒めてあげてください。
ASDには、“収集癖がある”という特性もあり、ご褒美シールを集めたいから勉強するというのがモチベーションになることもあります。
「シールを20枚集めたらケーキを食べていいよ」というように、家庭でルールを決めるのもいいでしょう。
勉強する習慣が身についてきたら、自分自身で問題が解けること、知識が増えていくこと、将来の夢に近づいていくことが“いいこと”になってきます。
3. まとめ
発達障害の子どもが勉強ができないのは、その障害ゆえに仕方ないことだともいえます。
しかし、勉強へのヤル気さえあれば、マイペースでも確実に、知識を増やし、成績を上げていくことができます。
勉強に前向きにさせてあげられるかは保護者の日々の接し方次第。
できる喜びを感じさせ、勉強の楽しさを教えてあげてください。