子どもが国語の文章読解を特に苦手にしているという声をよく聞きます。
確かに、長い文章を読み、そこに書かれている内容を理解するのは容易なことではありません。
とくに発達障害などで認知処理に偏りがある場合は難しいことでしょう。
今回は、「同時処理」、「継次処理」といった得意な認知処理様式を活かしながら、物語文の内容を理解する方法をご紹介します。
目次
1. 国語の文章読解が難しいのはなぜ?
国語は、「読み書き」という生活に欠かせない技能を学ぶ教科であり、他の教科を勉強するうえでも必要となるものです。
国語の文章読解が難しいのは、基本となる知識を積み重ねていかなければ問題が解けないからでしょう。
各学年で習う漢字をマスターしていくこと、語彙力を増やしていくこと、接続詞の使い方等の文法など。
前の学年で習ったものを理解していなければ問題が解けないため、苦手な子は遅れがどんどん大きくなってしまうのです。
加えて、「登場人物のこの時の気持ちは?」など、物語の内容を理解し、直接書かれていないことまで想像して答えなければならない問題もでてきます。
認知処理に偏りがある子どもは文章の内容を理解するのも簡単ではありません。
そのため、苦手意識が強くなってしまうのでしょう。
2. 同時処理・継次処理を活かした勉強法
認知処理様式には、大きく2つに分けることができます。
「同時処理」と「継次処理」それぞれの特徴を見ていきましょう。
2-1. 同時処理と継次処理の違い
「同時処理」は、まず物事の全体像を把握し、それから細部の理解を深めていく認知様式です。
視覚的手がかりがあると理解しやすく、空間的・統合的な情報を重視します。
「継次処理」は、物事を段階的に、部分的に捉えながら全体の理解を深めていく認知様式です。
聴覚的・言語的手がかりがあると理解しやすく、時間的・分析的な情報を重視します。
この2つのバランスが取れている場合、無意識に適したほうを選択したり、双方を複合的に組み合わせたりすることで問題を解決していきます。
しかし、このバランスが取れていない場合、物事を理解するのに困難が生じてしまうのです。
2-2. どちらが得意かを把握するには?
子どもに合った勉強法を選ぶためには、同時処理と継次処理のどちらが得意なのかを把握する必要があります。
まずは全体像を把握してからのほうが理解しやすいのか、一からしっかりと説明をすることで理解しやすいのかといったことを、普段の勉強でどうやって問題を解いているのか、生活の中でどちらを使っているのかなどを観察して把握してみましょう。
例えば、目的地までの道順を把握する場合、同時処理が得意なら、まず地図を渡してここからここへ行くということを視覚的に捉えさせたほうが理解できます。
反対に、継次処理が得意なら、「ここを右に出て、300メートル進んだら信号を左折して……」など、細かく言葉で指示するほうが理解できます。
子どもがどちらのタイプなのか見極めてみてください。
また、知能検査の1つである「KABC」では、より詳しく検査してどちらが得意なのか、どうやって勉強するのが効果的なのかを知ることができます。
3. 認知処理様式別・国語の文章読解の勉強法
同時処理と継次処理、得意な様式に合わせた国語の文章読解の勉強法をご紹介します。
3-1. 同時処理が得意な子どもの文章読解勉強法
【小学校中学年まで】
同時処理が得意な子どもは、視覚的情報を手がかりにすると理解しやすいため、教科書などに載っている挿絵を一緒に見て、内容を予想させてイメージさせます。同じ作品で挿絵の多い絵本などがあれば読ませるのも効果的です。
【小学校高学年】
(1) すべて理解できなくてもよいので、まずは通して読ませ、感想をシートに書かせます。
このとき、わからなかったところに印をつけるようにするといいでしょう。
(2)このように、最初に作ったシートをもとに読み進めていきます。
全体を意味段落で分け、それぞれどんなことが書かれているかをまとめていきます。
また、好きなシーンを選ばせ、そのシーンでの登場人物の気持ちなどを書き込ませます。
(3)最後に感想を書かせ、最初に読んだときの感想との違いを話し合います。
3-2. 継次処理が得意な子どもの文章読解勉強法
【小学校中学年まで】
まずは大人が読み聞かせをしたり、朗読の音源を聞かせたりするのが効果的です。段落ごとに区切って、内容を確認しながら進めていきます。
【小学校高学年】
(1)まずは題名から、物語の内容を想像させます。
(2)形式段落ごとに、ワークシートにキーワードや内容、わからない言葉などを書きこみしながら少しずつ読み進めていきます。
(3)最後まで読んだら、最初に考えた題名からの想像と主題がどう違っていたのかを話し合います。
国語の読解問題が苦手な子どもも、勉強法を変えれば理解度が大きく変わってきます。
大切なのは、子ども1人ひとりに合った勉強法を選んであげること。
子どもの得意な認知処理様式を把握し、ベストな勉強法を見つけてあげてください。
参考:
『長所活用型指導で子どもが変わる Part2国語・算数・遊び・日常生活のつまづきの指導』藤田和弘監修/熊谷恵子・青山真二編著(図書文化)
『長所活用型指導で子どもが変わる Part3認知処理様式を生かす各教科・ソーシャルスキルの指導』藤田和弘監修・熊谷恵子・柘植雅義・三浦光哉・星井純子編著(図書文化)
4. 継次処理と同時処理のどっちが得意?
どちらがどれぐらい得意で不得意かを図る検査サービスがあります。
学習教材「すらら」が2019年3月から検査サービスとして提供しているので、ご興味ある方は下記サイトを見てみてください。
■すららのK-ABCⅡ検査サービス
https://surala.jp/assessment/kabc2/lp/