急に興奮して立ち歩いたり、すぐに気が散って別のことを始めてしまったり、、、
発達障害の子どもはなかなか勉強に集中できない傾向があります。
「どうすれば落ち着いて勉強してくれるのだろう…」と深刻に悩んでいる保護者も多いのではないでしょうか。
このような場合、学習環境を整えることで、集中できない理由が大きく軽減されます。
今回は、発達障害の子どもが勉強に集中するために必要な学習環境について考えてみましょう。
目次
1. 勉強のつまずきの原因を探ることが大切
「勉強に集中できない」ということは同じでも、その原因は一人ひとり異なります。
<勉強に集中できない理由例>
- 周りの音が気になって集中できない。
- 何からやればいいかわからなくて手をつけられない。
- 読み書きや計算が苦手で勉強が進まない。
- いくらやっても覚えられないからヤル気を失っている。
上記のような様々な理由が考えられるため、子どもがなぜ集中できないのかを突き詰めて考える必要があります。
そして、このつまずきの原因は、本人にはなかなかわからないものです。原因を明らかにせず、「がんばって勉強しなさい」と励ましたり、子ども自身に解決策を見つけさせようとしたりすることは、“できない自分”のイメージだけを植えつけてしまうことになります。
その結果、「どうせやっても無駄だ」、「勉強なんて面倒だ」と勉強に後ろ向きな子になってしまうのです。
うーん。
いつやるんだろなぁ。
宿題。息子よ。
オカンは待ちくたびれた。
そろそろ一言言うべきか。#発達障害— き…きりん?! (@oyabakasan1973) October 21, 2017
まずは保護者が原因を見つけてあげて、子どもと一緒に対処法を見つけていきましょう。
2. 障害に合わせて整えるべき学習環境
では、具体的にどんな学習環境が必要なのか、障害ごとに考えてみましょう。
発達障害は複数の障害が併発していることも多く、また症状の出方もそれぞれ異なりますので、子どもに合ったものを選んで実践してみてください。
2-1. ADHD(注意欠陥多動性障害)の子に必要な学習環境
ADHD(注意欠陥多動性障害)は、机に向かって座ることが苦手で、ちょっとしたことで乱暴になったり大声を上げたりする「多動衝動優勢型」、ぼーっとしていて忘れ物やケアレスミスが多い「不注意優勢型」、この2つが混ざり合う「混合型」の3つに分けられます。
とくに「多動衝動優勢型」、「混合型」の場合は下記のような環境設定が有効です。
壁を向いて勉強する
→窓の外の景色など、視覚的な刺激によって集中力が削がれてしまいます。
机は壁を向け、余計なものが見えないようにしましょう。
ヘッドセットをする
→症状にもよりますが、耳から入ってくる刺激に敏感で集中できないこともあります。
不要な聴覚情報をシャットアウトしましょう。
逆に、ヘッドセットで音楽(BGM)を流す、音声解説付きの教材を使うなど、一定の聴覚刺激を入れ続けることによって他の音が気にならなくなり集中できることもあります。
一人の空間を作る
→人の動きに敏感で、大勢のいる教室や、家族のいる部屋では集中できないことがあります。
落ち着いた空間を作ってあげるようにしましょう。
学習計画を事前に作る
→勉強をやり始めても「あれもやりたい、これもやりたい」と、さまざまなことが気になって集中できないことがあります。
事前に計画を立て、やるべきことを決めておくことが効果的です。
2-2. ASD(自閉スペクトラム症)の子に必要な学習環境
ASD(自閉スペクトラム症)の子どもは、対人関係が苦手な傾向があります。
空気が読めない、質問できない、相手の立場にたてない、周りに合わせられないなどの特徴があり、塾や学校などの集団授業にはなかなかついていくことができません。また、予想外の出来事が起こるとパニックを起こしてしまうことがあり、下記のような環境設定が考えられます。
人との関わりができるだけ少ない環境で勉強させる
→集団塾より家庭教師。それも、発達障害専門の家庭教師がいいでしょう。
また、先生と1対1で向き合うことも難しい場合は、パソコンやタブレットを使って勉強するeラーニングも適しています。
同じことの繰り返しの中で学ばせる
→集団授業のように、突然指名されたり、抜き打ちテストがあったりすると対処できずパニックを起こしてしまうことがあります。
「毎日漢字を5問、計算を5問やる」というようにあらかじめ起こることがわかっている状況のほうが勉強に集中できます。
学習計画を立てることも必要でしょう。
2-3. LD(学習障害)の子に必要な学習環境
LD(学習障害)は、全般的な知的発達に遅れはないものの、読む・書く・計算する・聞きとる・推論するなど、学習に必要な脳の機能が極端に働かないのが特徴です。
知的発達に遅れがないため、わかっているのに答えが書けない、解き方はわかるのに途中の計算ができないなど、もどかしい思いをすることも多いようです。その場合、下記のような勉強法を検討しましょう。
適切な機器を使わせる
計算でつまずいてしまう子どもには電卓を、文字を書くことが苦手な子どもにはパソコンを使わせるなど、苦手なことを無理にやらず、得意な方法で勉強させることが大切です。せっかくの学習への興味を失わせないようにしましょう。
2-4. 共通して検討するべき学習環境
いずれの障害にも共通して必要な学習環境は、勉強のモチベーションを上げる工夫をすることです。 たとえば、以下のようなことが考えられます。
楽しいと感じる教材を使う
勉強になかなか集中できない子どもも、ゲームやアニメなど好きなことには没頭することがよくあります。
ひたすら問題集を解くというような無味乾燥な教材より、キャラクターを多用したものや、アニメや動画で学ぶeラーニング教材など、子どもの興味を引き付ける教材を選びましょう。
受け身にならないようにする
とくに、自分から質問することが苦手な子は、聞くだけの授業だと、わからなくてもそのまま聞き流してしまいます。
また、どのような子どももひたすら話を聞く受け身の授業では集中力が続きにくいでしょう。
適度に、わかったかどうか質問を投げかけたり、実際に問題を解いてみたり、積極的に参加できるような授業、教材を選ぶことが大切です。
適切にごほうびを与える
「勉強するといいことがある」と思わせることは、子どものモチベーションアップにつながり、集中力にも結びつきます。
特別なごほうびでなくても、「勉強するとお母さんが褒めてくれる」とか「ドリルを1ページやるとシールをもらえる」というような簡単なもので十分です。
発達障害の子どもは収集癖のある子も多く、ごほうびシールを集めるために一生懸命勉強するようになったというケースもあります。
3. 発達障害で勉強に集中できない子に必要な学習環境まとめ
確かに発達障害の子どもは、勉強面で不利なことがたくさんあります。
そのため、なかなか集中できないのも仕方ないことでしょう。
しかし、その原因を探り、きちんと学習環境を整えてあげることで、必ず集中力をアップさせることができます。
勉強に集中できない原因を見極め、子どもひとり一人に合った対策を取っていきましょう。