誰にでも得意分野と不得意分野があります。しかし、発達障害の子どもは、特にその差が大きいのが特徴です。そのような子どもの勉強は、一人ひとりの特性にあったものである必要があります。得意分野を生かし、不得意分野を補うような勉強法で学力を伸ばしてあげましょう。
目次
1. 発達障害の子どもは得意・不得意の差が激しい
発達障害の子どもは、勉強に対するさまざまな障害を抱えています。
ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)の子どもが抱える勉強への問題にはざっと以下のようなものがあります。
ASD(自閉スペクトラム症)の勉強への問題
- 言葉や文字になっていないものを推測する力が弱く、想像力を問われる問題が苦手
- 特定のものに対する執着が強く、それ以外の物事がなかなかできない(不得意分野の勉強をしたがらない)
- 予想外の出来事に対応できないため、応用問題が苦手だったり、抜き打ちテストに対応できなかったりする
- 他人と関わりを持とうとしないため、わからない問題があっても質問できない
ADHD(注意欠陥多動性障害)の勉強への問題
- 多動の症状があり、静かに授業を受けたり、問題を解いたりすることができない
- すぐに席を立ったり、おしゃべりをしたりしてしまう
- 周囲のさまざまなものに気を取られてしまう
- 思考が次から次へと移り変わってしまい落ち着かない
- ケアレスミスが多く、解答を間違えてしまう
LD(学習障害)の勉強への問題
- 漢字の部首など、文字のパーツを覚えられない
- 聞き取ったことや考えたことを文字に変換することが苦手で、書き間違いが多い
- 視覚認知に偏りがあり、文字や単語を見分けることが苦手
- 文字をまとまりとして読むことが苦手で「ひこうき」を「ひこ」「う」「き」などと読んでしまう
- 文章を読めても内容が理解できない
- 数字や計算式の記号などを理解するのが困難
など、それぞれまったく異なる特性があります。
たとえば、自閉症と診断されているAくんの場合で見てみると…
英語と数学が得意で、テストでは満点近くを取ることもある。暗記力に優れているため、物理や化学、歴史も得意。読解力を問うような問題が苦手なため、国語の読解問題には苦労している。数学も文章題になるとミスをしてしまうことがある。古文や漢文は暗記で解けることもあり、苦手意識はない。
障害の度合いは一人ずつ異なりますので、その特性によって学力が大きく左右されることがわかります。
2. 得意・不得意の差が激しい子どもに必要な勉強法とは
それでは、得意・不得意の差が激しい子どもにはどのように勉強させたら良いでしょうか。
2-1 まずは特性と学力を見極める
まず大前提として、子どもの特性と、現在の学力を把握する必要があります。
「計算が得意」、「読解問題が苦手」ということだけでなく、障害の特性がどのように勉強に影響しているのかきちんと理解しましょう。
そのうえで、各教科、さらには各分野ごとに、現状どのレベルにいるのか、どこまで理解していて、どこからわからないかを把握します。
そのためには、過去にさかのぼって総ざらいをするようなテストやドリルをやってみる必要があるかもしれません。
保護者が寄り添いながら、ドリルなどを解かせたり、テスト機能のあるeラーニング教材を使ったりといった方法があるでしょう。
2-2 無学年方式の勉強法が必要
たとえば、得意・不得意の差が激しいにも関わらず、現在の学校の勉強の進度に合わせた勉強をさせ続けていたとしたら……。
遅れている不得意分野に関しては、授業が理解できずさらに遅れが大きくなる結果になります。授業で指されても答えられなかったり、テストの点数が悪かったりするとさらに自信をなくし、勉強する気力が失われてしまうかもしれません。
得意分野に関しても、本人に意欲があれば、どんどん学習を先へ進めてあげることで将来が開けるかもしれません。
そのためには、学年の枠を越えて勉強ができる無学年方式の教材を使うか、個別指導の塾や家庭教師を選ぶ必要があるでしょう。
2-3 体系的に学べる教材を選ぶ
ただ、無学年方式だけでは十分ではありません。
数学の例でいえば、計算問題は得意だけれど、文章問題や図形問題は苦手というように、分野ごとに差がある場合も多いでしょう。その場合、学年で区切ってまんべんなく勉強するより、「体系的」に勉強するほうが知識は定着しやすくなります。
苦手な図形は、理解できていない学年までさかのぼって学習して知識を積み上げていくことで、今の学年に追いつかせることができます。
また、ワーキングメモリが弱い子どもも、このように集中して勉強することで知識が定着しやすくなります。
3. 子どもの特性に合わせた配慮をしよう
無学年方式で体系的に学習できる勉強法を選ぶことが、得意・不得意の差が激しい子に適しているといえます。
それに加え、子どもの特性に合わせて勉強に集中するための環境づくりや、モチベーションアップ法を実践していきましょう。
・学習環境を整える
発達障害の子どもは、その特性によりなかなか勉強に集中できないことがよくあります。気が散らないように机を壁に向けたり、周囲の音をシャットアウトするようにヘッドセットを装着したりというように適正に合わせて学習環境を整えてあげましょう。
・得意な感覚を生かせる教材を選ぶ
視覚優位、聴覚優位など得意な感覚がある場合は、それを使って勉強できる教材を選んであげましょう。動画やアニメーションで学ぶeラーニング教材なら、紙の教材より理解しやすく、集中しながら楽しく学べる可能性が高いでしょう。
教材については下記記事も合わせてご覧ください。
・学習計画をしっかりたてる
発達障害の子どもが自分で学習計画を立てて実行していくことは難しいでしょう。好きな問題ばかり解いて前に進まなかったり、あちこちランダムに解いていくため知識が定着しなかったりという恐れがあります。
保護者がしっかり学習計画を立て、それをクリアしたかどうか見届ける必要があります。
自閉症の子どもは、決められたスケジュールを繰り返すことを好む傾向があり、その場合はあらかじめ学習計画を把握することで安心して勉強に集中できるようです。
・スタンプなどでモチベーションを上げる
勉強したあとのご褒美も、子どもにとっては勉強する動機になります。特別なものを用意しなくても、ご褒美スタンプをカレンダーに押してあげるだけでも喜んで勉強するかもしれません。「勉強したらおやつを食べる」でもいいでしょう。
子どもが喜ぶことで、負担なく続けられるモチベーションアップ法を考えましょう。
※勉強後のご褒美のあげ方の詳細については、下記記事もあわせてご覧ください。
勉強法を工夫したり、環境を整えたりしてあげるだけで、得意分野はさらに得意になり、不得意分野は遅れが小さくなります。それを積み重ねていくことで、子どもの学力は底上げされていくでしょう。そのためには、保護者と子どもが一緒にがんばることが必要です。