WISCという知能検査をご存知でしょうか。
WISCは、子どもを対象とした、70年以上の歴史を持つ知能検査です。
子どもができること、苦手としていること、発達や成長の度合いなどを、検査数値を通して客観的に判断するために用いられ、日本でもっとも使われている知能検査でもあります。
この検査はいわゆる「IQテスト」とよばれるものですが、発達の凸凹を知ることができるため、発達障害の診断のひとつとして、また、支援する周囲が本人の困り感を知る手段として使われることもあります。
今回は、発達障害を疑う時、診断がついた後などに行われることのある「WISC検査」について、どのような検査なのかを詳しく見ていきましょう。
1. WISCの基本情報
WISCは知能検査のひとつで、質問に答える形式で行われる検査です。
検査項目からわかる数値結果は、言語理解・知覚推理・処理速度・ワーキングメモリーなどで、多方面から発達を把握することができます。発達障害のある子どもは様々な「困難」や「苦手」を抱えていますが、目には見えず非常に分かりにくいため、自分で困っていることを説明するのも難しいことが多くあります。
子どもの状況を客観的に判断し、より良い支援を行うために用いられる検査のひとつがWISCなのです。
<WISC基本情報>
対象年齢 | 5歳0か月~16歳11か月までの子ども |
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条件 |
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所要時間 | 60分~90分程度。 ※年齢や状況により変わります。 |
価格 | 無料、または1,400円~3万円程度。 ※受ける場所や地域などにより変わります。 |
結果がでるまでの期間 | 1週間~1か月ほど |
受験機関 | 病院(精神科・小児科・小児精神科)、学校、地域の相談支援センター、児童相談所など |
WISCの内容とは?
WISCは、全検査IQという知能の数値を総合的に検出します。
今最も多く使われているWISCⅣでは10~15個の検査項目があり、標準点からIQを算出しています。
検査項目は4つあり、下記の通りです。
検査目的と検査方法の例を見ていきましょう。
●言語理解(VC)
言葉の概念・憶測などを日常生活の中で理解し表現できているかなどを判断します。
検査例 | 乗り物はどれ? →カードの中から選ぶ →この中で空を飛ぶものはどれ? →鳥・虫・飛行機などを選べるかどうか確認する などの方法で検査します。 |
この検査では、例えばわからないことがあった時に、誰かにきちんと質問ができるかどうかなどがわかります。
●知覚推理(PRI)
目で見た情報を取り込み推測する、視覚パターンを推測し認知する、などの能力を測ります。
検査例 | お手本の図形を見ながら、積み木で同じ形を作る、パターンを読み取り共通部分を見出し、パズルを完成させる等の方法で検査します。 |
この検査では、課題や目標に最後まで集中して取り組むことができるかなどの集中の状況を判断することもできます。
●ワーキングメモリー(WMI)
耳から情報を得ながら頭の中で処理するという並行能力を読み取ります。
検査例 | 数字の羅列を聞き取り、小さな順に並べ替えて答える等の方法で検査します。 |
常に新しい情報を上書きしたり、短期的な記憶力を保持したり、同時に二つのことを処理することができるかがわかります。
●処理速度(PSI)
視覚的な情報を事務的に、正確に処理していく能力を読み取ります。
検査例 | 時間制限をされた中で、提示された条件に合った数と図形とを紐づけ記録していく等の方法で検査します。 |
このような内容で検査をすすめていきます。
WISC-Ⅳとは?
WISC-Ⅳとは、児童向けウェクスラー式知能検査のひとつです。
1974年にWISC-Rという知能検査が開発され、1991年には改訂版のWISC-Ⅲが、そして2004年にはさらに改定されたWISC-Ⅳが開発されました。
新たな版が開発されるごとに内容が変化し、発達基準と時代の流れが同じになるように、また、正しい評価や受けやすい検査内容になるように、常に見直されています。
日本で最も使われている知能検査です。
WISCの注意点
発達障害の診断に使われることが多い知能検査ですが、この検査だけで発達障害かどうかがはっきり分かるわけではありません。
検査は時間がかかり、同じような質問が繰り返されるため子どもに疲れも溜まります。
そのため、いつも正確な数値が出るとは限りません。
また、問題の記憶が残っていると正確な数値が出せないので、1年以上の期間を開けて検査することが望ましいと言われています。
2. WISCと他の検査との違い
知能検査はWISCの他にも下記などがあります。
- 田中ビネー式知能検査
- K-ABC
- レーヴン色彩マトリックス検査
- DN-CAS認知評価システム
その中でもWISCが一番使われているのはなぜなのでしょうか。
WISCは、いくつかの検査項目で構成された科学的な視点と、それを受けている人の様子、成育歴、日常の困り感、障害と思われる状況も加味し、様々な視点からのアセスメントができるテストです。
意欲・知的な理解、社会性、こだわりや気持ちの切替、不注意・衝動性、記録の時の筆圧など、発達障害の特性も見ていきます。
また、一見困り感が表面化していない子どもでも、WISCを受けることでわかる結果からより効果的な指導や接し方を考えることができます。
こういった多方面からの判断により今後の課題、指導方法が見えることがWISCの最も使われている理由です。
WISCで発達障害がわかる?
WISCで検査をするきっかけは、「もしかしたらうちの子は発達障害かもしれない」と疑うことからでしょう。
この場合、子どもの困難とすることや苦手なことが前もってわかっていることが多いのではないでしょうか。
WISCを受けることで発達障害の診断を付けることは方法のひとつでしかなく、どちらかと言えば発達障害を疑い、そういった特性を持つ子どもが、どんなことに困難さを持ち合わせているのかを科学的・客観的に見ることを目的としているものです。
では発達障害の診断にはどのような方法があるのでしょうか。
それにはWISC検査と合わせて学力的な検査、行動の観察、これまでの成育歴などを一緒に見て判断しなければなりません。
年齢が小さいときや、検査の疲れがあるときなど、状況によって数値は流動的になります。
ですが何年か先であっても基本的な得意や苦手のパターンは変わらないことが多いです。
子どもの弱さや困難を知ること、困難に向けた周囲の的確な支援方法を知ること、子ども本人に弱さや困難を伝え一緒に考えることなど、WISCは今後の子育てにおいて大変参考になるものです。
3. WISCに関するまとめ
WISCという知能検査について、検査方法や内容をご紹介しました。
発達障害を診断することだけが目的ではなく、困り感のある子どもがどういった得意・不得意があり、周囲はどのような支援ができるのかを知ることができるWISCは、とても有効なテストです。
もしもお子さんに困難がある、育て方が難しいなどのお悩みがあれば、一度受けてみることをおすすめします。
有効な支援方法を知ることができ、今後の子育てにおいて大きな手助けになることでしょう。
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