さまざまな事情で不登校になってしまう子どもが増えています。クラスにうまくなじむことができなかったり、授業についていけなかったりとその要因はさまざまですが、保護者にとって大きな心配であることに違いありません。「不登校になってから勉強する機会がまったくない」、「勉強がどんどん遅れていくので本人も不安がっている」、「高校受験をさせてあげたいが、このままでは内申点が足りない」など、勉強や受験に関する悩みもよく聞かれます。今回は、不登校でも家庭で勉強することで学校を“出席扱い”にできる制度について解説します。
1. 家庭学習で学校を“出席扱い”にすることの意味
不登校でも条件を満たして家庭学習することで“出席扱い”にできるという制度は、文部科学省によって定められたものです。この制度は、「不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向けた進路選択を支援する」ことを目的としています。
とくに高校受験を考える中学生の場合、欠席日数が多いと不利になることがいくつかあります。
<欠席日数が多いと…>
- 定期テストを欠席してしまうと、成績が「1」となり内申点が低くなる。
- 推薦入試ではとくに内申点が重視されるため、不利になってしまう。
- 公立高校の一般入試でも、同じ点数の受験者では、内申点が良いほうが有利になる。
- 私立高校の入試では欠席日数に「年間30日以下」などとボーダーを定めていることも多く、欠席日数が多いと受験できなくなってしまう
このように、欠席日数が多いことは、その子どもの将来への可能性を狭めてしまうことにもつながります。「今は不登校でも、高校に進学したい」と考えている子どもにとって、家で勉強しながら出席扱いにできる制度は大きな意味のあるものでしょう。
2. 文部科学省の定める6つの要件を確認しよう
では、制度について詳しく見ていきましょう。文部科学省では、不登校の児童・生徒に対し、IT等を活用した自宅学習で出席扱いにするという方針を定めています。下記の6つが、“出席扱い”とするための要件です。
※文科省の不登校生出席扱い要件の「概略図」より抜粋
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/04121502/06041201.htm
2-1 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係があること
この制度はまだ多くの学校で事例がなく、先生も知らないことが多いのが現状です。まずは保護者から担任の先生に相談し、このような制度があることを伝えましょう。担任の先生を通じて、学校と連携・協力してもらう必要があります。
2-2 ITや郵送、FAXなどの通信方法を活用した学習活動であること
家庭学習なら何でもいいというわけではなく、「ITや郵送、FAXなどの通信方法を活用した学習活動」である必要があります。
2-3 訪問等による対面の指導が適切に行われること
この制度は、最終的には学校へ復帰することが目的になっています。そのため、訪問指導する方が必要になります。担任の先生やスクールカウンセラーが担当するケースのほか、保健室に登校することや、適応教室に通うことがその役割を担うことがあります。まずは担任の先生に相談してみましょう。
2-4 学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること
「学習活動は、当該児童生徒の学習の理解の程度を踏まえた計画的な学習プログラムであること」と定められています。発達障害の子どもの場合、学校の授業よりかなり遅れているケースも多く、本人のレベルに合わせた内容で、計画的な学習計画に沿ったものである必要があります。どの教材を選ぶか、よく検討する必要があるでしょう。
2-5 校長が対面指導や学習活動の状況を十分に把握していること
どのような対面指導が行われ、学習の進度はどうなのかを校長先生が把握している必要があります。担任の先生から校長先生へスムーズに報告してもらうため、学習履歴をしっかりと残す必要があります。
2-6 学校外の公的機関や民間施設等で相談・指導を受けられない場合に行う学習活動であること
適応教室やフリースクールなどに通える場合は要件を満たしません。子どもと相談し、自宅学習のほうが良いか決めましょう。他の生徒や塾の先生などに会うことがストレスになってしまうような場合は家庭学習が良いでしょう。
3. 勉強に自信をつけられる教材を選ぼう
上記の(2ー2)にあるとおり、教材は「ITや郵送、FAXなどの通信方法を活用した学習活動」であるかに基づいて選ぶ必要があります。紙の通信教材という選択肢もありますが、おすすめは、パソコンやタブレットを使ったeラーニング教材です。選ぶ際のポイントは以下の通りです。
3-1 自分のペースに合った内容を勉強できること
不登校の場合、勉強がかなり遅れている可能性が考えられます。過去の学年で習った勉強も理解できていないこともあるでしょう。その場合、現在の学年の授業に合わせた内容ではついていくことができません。学年の枠を越えて勉強できる「無学年方式」の教材で、個人のペースに合わせて「さかのぼり学習」ができるものがいいでしょう。
また、いきなり問題を解かせるのではなく、ゼロから子ども1人で理解できる、丁寧なレクチャーが必要です。
3-2 しっかりした学習計画が立てられること
自分に合った学習計画を子ども自身がつくることは難しいでしょう。そのため、子どもの理解度をふまえて学習計画を立ててくれる人が必要になります。保護者がその役割を担うこともできますが、プロの先生が計画を立ててくれる教材なら安心です。
3-3 学習履歴が残ること
校長先生への報告のためには、どれだけ勉強したかがすぐにわかる履歴を残す必要があります。学習時間やクリアした範囲が履歴で残る教材なら、その履歴を見せるだけでよいのでおすすめです。
4. 不登校生徒の家庭学習まとめ
不登校の子ども自身も、勉強が遅れていくことや将来のことを不安に感じているかもしれません。家にいながら、自分のペースで着実に学力をつけていくことができれば、勉強への自信を取り戻すことができるでしょう。なおかつ“出席扱い”にできる教材なら、子どもも復学や受験などの目標を持ちやすくなり、勉強に前向きになることができます。子どもの不登校に悩む保護者は、ぜひこの制度を利用することを検討してみてください。
おすすめのeラーニング教材については、下記記事もあわせてご確認ください。