夏休みの宿題の定番、読書感想文。
読書感想文の他にも、「物語を読んで感想を書く」という国語の宿題など、感想文を書く機会は意外と多いものです。
感想文は、書くのが得意な子と苦手な子の差が大きいという特徴があります。
得意な場合はいいのですが、感想文に対して一度苦手意識を持ってしまったら、克服するのはなかなか難しいものです。
感想文への苦手意識を克服するためには、保護者のサポートが必要です。
今回は、子どもの能力を最大限引き出す「スキャフォールディング」という手法で感想文を書くサポートをする方法をご紹介します。
目次
1. 感想文が難しいのはなぜ?感想文を書くのに不可欠な3つの能力とは
保護者の中にも、子どものとき感想文が苦手だったという方は多いことでしょう。
感想文が難しいのはなぜなのでしょうか。
感想文が苦手な子どもの多くは、「何を書いたらいいかわからない」「どうやって書けばいいかわからない」と言います。
感想文は自分の考えを書けばいいものなので、何を書いても間違いではありません。
ですが、苦手な人が感想文を書くと、「おもしろかった」「感動した」などの単調な感想になったり、ただあらすじをダラダラとなぞって終わりになってしまったりします。
感想文を書くには以下の3つの能力が必要だと言われています。
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<感想文を書くために必要な3つの能力>
- 文章を読み解く力
- 登場人物の気持ちや情景に対する想像力
- 文章構成力
これらのどれか1つでも欠けてしまうと、感想文を書くことが難しくなってしまうのです。
2. 「スキャフォールディング」で感想文をサポートする方法とは?子どもの感想を引き出すのは親からの質問
感想文が苦手な子どもをサポートするには、具体的に何をすればいいのでしょうか。
子どもの代わりに全部書いてあげるほど何から何までやってしまう保護者がいますが、それではいつまでたっても子どもは感想文を書けるようになりません。
最終的には、サポートなしで子どもが一人で感想文を書けるようになるのが目標です。
「スキャフォールディング」なら、子どものレベルに合わせてサポートの程度を加減していくことができます。
2−1 子どもの力を引き出す「スキャフォールディング」とは?
「スキャフォールディング(scaffolding)」は、「足場かけ」という意味です。
今回の場合は、子どもが何かをしようとしてうまくいかないときに親が解決の方法を適切に示してあげることを指します。
最終的には子どもが1人で解決することが目標なので、子どもの成長とともに少しずつ足場を減らす(サポートを減らす)ことが大切です。
うまくいくための答えを直接教えるのと違って、「スキャフォールディング」は子どもが自力で解決にたどり着く力を養うものです。
例えば、子どもが勉強でつまずいてしまったとき、「スキャフォールディング」では親が子どもに「じゃあ、ここで辞書を引いてみようか」「教科書に戻ってこの部分を読んでみようか」というような言葉をかけます。
ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーは、「今1人でできなくても、将来できるようになる可能性のある『伸びしろ』まで含めて子どものIQである」と提唱しています。
親は子どもの伸びしろを上手く引き出してあげるための手助けをしてあげればよいのです。
保護者の子どもへの関わり方次第で、子どもの能力は劇的に向上する可能性があるのです。
2−2 「スキャフォールディング」で感想文を書きやすくする
では、「スキャフォールディング」を感想文に使う方法を見ていきましょう。
まず、子どもが感想文を書くうえで、何に苦手意識があるのかを確認しましょう。
子どもの苦手に合わせて、「スキャフォールディング」の内容を変えていくのです。
子どもが何に困っているかに合わせた「スキャフォールディング」の方法をみてみましょう。
何を書けばいいかわからない、感想が出てこない
このような場合、子どもの感想を引き出すような質問をしていくのが有効です。
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<子どもの感想を引き出す質問の具体例>
- 「この本を選んだのはどうして?(子どもが選んだ本の場合)」
- 「絵を見てどう思った?(挿絵がある場合)」
- 「好きな登場人物はだれ?それはどうして?」
- 「印象に残った場面はどこ?それはどうして?」
- 「自分だったらどうすると思う?」
- 「あなたもそんな体験をしたことがある?そのときどう思った?」
- 「印象に残ったセリフや言葉はどれ?自分がそのセリフを言われたらどう思う?」
- 「この文章を読んで新しく知ったことはある?知ってどう思った?」
上記のように、「どうしてそう思ったの?」「自分だったらどうすると思う?」というように質問を掘り下げていき、単に「おもしろかった」「感動した」だけではない感想を子どもから引き出しましょう。
それを書きとめ、文章にすれば立派な感想文になります。
どうやって文章にしたらいいかわからない、文章を構成できない
この場合も、子どもに質問をすること自体は先ほどと同じで構いません。
子どもは文章を構成することを苦手にしているため、感想文の構成を想定しつつ質問する順番を調整してあげるといいでしょう。
いろいろな書き方がありますが、よく用いられる感想文の構成は次のようになっています。
(1)はじめ
本を手にしたきっかけや理由、表紙の印象、読む前の印象などを書きます。
(2)内容の簡単な説明
あらすじはできるだけ少ないほうが良いとされています。
感想文に必要な情報を簡潔にまとめます。
「この物語は、○○時代の××が舞台になっています」「主人公は○○を一生懸命がんばっている中学生の少女です」など簡単なもので問題ありません。
(3)感想
感想文のメインとなる部分です。
子どもの素直な感想を引き出しましょう。
必要に応じて、複数の要素を組み合わせて書きます。
「一番印象に残ったのは、○○の場面です。なぜなら×××だからです」「主人公の言った『○○○○』というセリフを読んだとき、わたしは××だと思いました。それは、△△△だからです」など、質問からわかった子どもの素直な気持ちを文章としてつなげていくのです。
(4)おわり
感想文の締めくくりです。
本を通して学んだこと、自分の中で変化したこと、これから活かしていきたいことなどを書くとまとまりやすくなります。
「この本を通して、ぼくは○○の大切さを感じました。これからは××していきたいと思います」「この本を読んで、○○に興味を持ちました。ほかのシリーズも読んでみたいと思います」などでまとめます。
保護者がこのような構成を意識しながら、子どもに質問をしていきます。
それを書きとめ、つなげてあげれば、感想文が完成します。
2-3 実践するときのポイント
「スキャフォールディング」を使って子どもの感想文をサポートする際に気をつけてほしいポイントがあります。
肯定的な相槌をうつ
子どもが質問に答えたら、親は「いいところに気付いたね」「そんな風に感じたんだ、すごいね」など肯定的な相槌をうつようにしましょう。
淡々と質問するだけになってしまうと、子どもは答えにくくなってしまい素直な気持ちが出せません。
保護者も同じ文章を読み、「この場面、感動したよね」など和やかに会話を進めていきましょう。
だんだんと足場を減らしていく
最初のうちは、文章にまとめるところまで保護者が導く形でも良いでしょう。
だんだんと上手くできるようになってきたら、質問をして答えを書きとめるところまで保護者がサポートし、文章にまとめるところは子どもがやってみるなど、少しずつ保護者からのサポートを減らしていきます。
2−4 子どもの認知処理様式を考慮しよう
発達障害のある子どもの場合、情報を処理するプロセスに偏りがある場合があります。
文章を読んで理解することが困難な可能性があり、その場合は子どもの得意な認知処理様式に沿ってサポートすることが効果的です。
「同時処理」と「継次処理」という2種類の認知処理様式について、簡単に見ていきましょう。
同時処理が得意な場合
同時処理は、まず物事の全体像を把握し、その後細部の理解を深めていく認知処理様式です。
視覚的な手がかりがあると理解しやすくなります。
文章を読んで理解しようとする場合、挿絵を一緒に見て内容をイメージさせたり、絵や表にまとめさせたりすると効果的です。
まずは全体を読ませて感想を聞き、その後、段落ごとにどんなことが書いてあるか、どんな感想をもったかなどを聞いていくのもおすすめです。
継次処理が得意な場合
継次処理は、物事を部分的、段階的に把握しながら少しずつ全体像の理解を深めていく処理様式です。
聴覚的、言語的手がかりがあると理解しやすくなります。
文章を読んで理解しようとする場合、保護者の読み聞かせや朗読の音声を聞かせたり、文頭から段落ごとに読み進めながら書いてある内容や感想をまとめさせる方法がおすすめです。
3. プラスαのサポートとは?重要なのは「子どもの苦手を知る」こと
「スキャフォールディング」で感想を引き出し、文章にまとめるまでのサポートについてご紹介しましたが、もしかしたら、子どもがつまずいているのは別のところかもしれません。
その際は、必要に応じて別の方法でサポートしていきましょう。
言葉の意味がわからない
「○○って難しい言葉だね。一緒に辞書で調べてみようか」など、言葉の意味がわからないときは辞書で調べれば良いのだということを覚えさせていきます。
新しく覚えた言葉をノートにまとめていくのもおすすめです。
漢字が読めない
漢字の勉強をサポートしていくことが必要ですが、文章を読んで感想文を書くにあたっては、あらかじめ保護者がふりがなをふっておいてあげることで解決できます。
字を書くのが苦手
保護者が文章にまとめて、それをそのまま子どもにマネして書かせたり、タイピングで書かせてみるといった方法があります。
感想文を書くというプロセスの中にも、さまざまなサポートの仕方があります。
子どもの特性に合わせて適切な方法を選んでいきましょう。
感想文を書く力は、夏休みの宿題や国語の授業のほかにも、入試問題、就職試験、仕事のレポートなどでも必要になってきます。
早めに苦手を克服させてあげたいですね。
「スキャフォールディング」は様々な場面で使うことができますので、ぜひ試してみてください。
「スキャフォールディング」についてより詳しく知りたい方は下記記事も合わせてご覧ください。