どんな親でも、子どもができた瞬間から一人前の親になれるわけではありません。
子どもを育てながら、親も子どもと一緒に成長していくものです。
「ペアレントトレーニング」は、発達障害などの子どもの保護者に向けた、親のためのプログラムです。
どんなものなのか、詳しく見ていきましょう。
目次
1. ペアレントトレーニングとは
ペアレントトレーニングとは、子どもと関わりながら、日常生活で起こる困難を解消し、子どもの発達を促したり、問題行動を減らして望ましい行動を増やしたりしていくための、保護者向けのプログラムのことを指します。
発達障害や知的障害の子どもが成長していくには、保護者が何よりの理解者である必要があります。
そのためには、保護者が専門家から学び、家庭での接し方を工夫していかなければならないでしょう。
ペアレントトレーニングを通して日常の困りごとを解決するほか、支援センターなどで行われている療育を家庭でも取り入れることで、子どもの成長を促します。
ペアレントトレーニングは、厚生労働省による発達障害支援施策の1つとなっており、地域ごとのネットワークを構築したり、専門家を養成したりといった対策が進んでいるところです。
1-1.ペアレントトレーニングの基本的な考え方
ペアレントトレーニングにはいくつかの種類がありますが、基本的には親が子どもの行動を観察し、それに応じた対応を取ることで、望ましい行動を増やしていくという考えに沿っています。
- 望ましくない行動は無視する
- できない行動には手助けをする
- できた行動は褒める
- スモールステップで少しずつ進めていく
- 怒ったり怒鳴ったりしない
これらの考えに沿った具体的な行動をご紹介します。
【ペアレントトレーニングによる行動の強化と消去】
◆望ましい行動を強化する
①きっかけ「宿題をやりなさいと言われる」
↓
②行動「きちんと宿題をする」
↓
③結果「親に褒められる」 ⇒ 行動が強化される
◆不適切な行動を消去する
①きっかけ「宿題をやりなさいと言われる」
↓
②行動「嫌がって暴れる」
↓
③結果「親は放っておく」 ⇒ 望ましくない行動が消去される
◆やってしまいがちなNG例
①きっかけ「宿題をやりなさいと言われる」
↓
②行動「嫌がる、ゲームをしたいと駄々をこねる」
↓
③結果「仕方ないのでゲーム機を渡す」 ⇒ 望ましくない行動が強化されてしまう
2. ペアレントトレーニングの種類
ペアレントトレーニングは、アメリカのハンス・ミラー博士によって1974年に開発されました。
日本では、この方法をアレンジした肥前方式、奈良方式、精研方式などが行われています。
2-1.肥前方式
国立肥前療養所(現:独立行政法人肥前精神医療センター)で開発されたプログラムです。
対象年齢は3〜12歳、定員は9名となっており、1回2時間半、全10回のプログラムになっています。
講義を受ける時間と、家庭での対応をグループ内で検討する時間の2部に分かれて構成されています。
2-2.奈良方式・精研方式
アメリカのシンシア・ウィッタム博士が、ADHDの子どもを持つ保護者向けに開発したプログラムを、奈良教育大学などが日本版に改良したものです。
対象年齢は4〜10歳、定員は8名程度となっており、1回90分、全10回のプログラムになっています。
講義を受ける時間、ロールプレイの時間のほか、家庭で学んだことを実践し、それをグループで共有するということを繰り返していきます。
3. ペアレントトレーニングを受けられる場所は?
ペアレントトレーニングは、各都道府県に設置されている発達障害者支援センターなどの行政機関のほか、病院などの医療機関などで実施されています。
また、近年では、民間の事業者やNPO法人、個人事業者などでも実施しているところがあります。
参考までに、いくつかの実施機関のURLを挙げておきます。
- まめの木クリニック・発達臨床研究所(東京都)
- 大阪市発達障がい者支援センター エルムおおさか(大阪府)
- キッズアカデミー ころん(愛知県)
4. ペアレントトレーニングの費用は?
ペアレントトレーニングの費用は、実施団体やプログラム内容によって異なります。
1回あたりの金額の大まかな目安として、以下を参考にしてください。
実施機関 | 1回あたりの金額の目安 |
---|---|
行政機関 | 無料〜2000円程度 |
医療機関 | 4000円前後 |
NPO法人 民間事業者 個人事業者 | グループ:2000円~6000円 マンツーマン:5000円〜10000円 |
5. ペアレントトレーニングに関するまとめ
ペアレントトレーニングは、今困っていることと、将来への悩みを具体的に相談でき、解決に導いていけるプログラムです。
専門家の講義やワークを受けたり、同じ環境にある保護者たちと話をしたりすることで知識が身につき、どう行動すればいいかが見えてくるでしょう。
漠然とした不安を抱えている保護者の方は、ぜひ一度相談してみてください。