発達障害のある子どもは、感覚過敏も生じやすいと言われています。
感覚過敏とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などの感覚が過敏になってしまい、人よりストレスを感じやすくなったり、疲れやすくなったりすることです。
子どもに起こる感覚過敏の具体的な事例を、実際にアンケートを取って確認しました。
どのように寄り添い、どういった対処をおこなうべきなのか考えていきましょう。
目次
1. 感覚過敏とは? 種類と症状をチェック
感覚過敏とは、発達障害児に多くみられる様々な感覚に関わる症状です。
大別すると、以下のように分類することができます。
- 視覚感覚過敏
- 聴覚過敏
- 臭覚過敏
- 味覚過敏
- 触覚過敏
目からの刺激を受けやすく、光をまぶしく感じる、掲示物から目が離せなくなるなど視覚に関する症状があります。
大きな音やサイレン、大声、怒鳴り声、泣き声、拍手など、苦手な音を聞いたときに耳をふさいだり、イライラしたり、落ち着かなくなったりその場にいられなくなったりする聴覚に関する症状があります。
香水やシャンプー、苦手な食べ物など、特定の匂いに苦手を感じる臭いに関する症状があります。
味付けの薄い、濃い、舌触りや食感、温度に関して過敏に反応するなど、味覚に関する症状があります。
服や下着のタグ、縫い目などが気になって着られなくなったり、ざらざらした手触りのものを触ったり踏んだりすることができないなど、触覚に関する症状があります。
こういった感覚過敏は、発達障害のある子どもに多く見られます。
ですが、発達障害と同様、目に見えない障害であるために、周囲に理解してもらうのが難しいことでもあります。
気に入らないことが多い、かんしゃくを起こしやすい、偏食が多い、など気になる様子に気づいていると、感覚過敏を知ったときに思い当たることがたくさんあるという親御さんも少なくありません。
それでは具体的にどういった感覚過敏が発症するのか、アンケートの答えをもとに、見ていきましょう。
2. 感覚過敏の具体例は?発達障害の子の保護者にアンケート
実際に発達障害があり、感覚過敏をもつ子どもの具体的な事例をアンケート結果からチェックしてみましょう。
アンケート結果をみると、その症状は実に様々であることがわかります。
●アンケートの内訳
アンケートは保護者14名に対して実施し、対象となった保護者様のお子様の学年は以下のような内訳でした。
- 「小学1~2年生」の保護者:7名
- 「小学3~4年生」の保護者:4名
- 「小学5~6年生」の保護者:1名
- 「中学生」の保護者:2名
●アンケートの回答
運動会のときの吹奏楽の合奏の音で頭痛がする、歯医者や内科など、病院へ行って口の中を見せるという行為で必ずといいほど吐くなどといった感覚過敏があります。
人混み、人の声などが耳元でガヤガヤ聞こえてくるのが苦手で、学校も辛そうです。 音、匂い、人混みの多いところがとにかく苦手です。
聴覚過敏と味覚過敏があるようです。中学1年生/男子 の保護者
音にとても敏感です。
駅のホームに入る時の電車の汽笛を怖がる、音が鳴るオモチャのスイッチをONにした時の最初に出る音が嫌で耳を塞ぐなど、聴覚過敏があります。小学2年生/男子 の保護者
小さな赤ちゃんのころは、感覚過敏があり抱っこを嫌がり、抱っこをすると何とか逃れようとのけぞっていました。
徐々におさまってきましたが、1歳半を過ぎてからは偏食がありました。
食べられるものと食べられないものがはっきりしていて、食べられるものでもここのメーカーのものは食べるけど違うメーカーのものは食べない、などのこだわりがあります。
口の中や味覚が過敏なのかなと感じました。小学1年生/男子 の保護者
服の着心地にとてもこだわりがあり、同じ下着などしか着ることができません。
新しい服を買っても「痒い」と言って騒ぎ絶対に着ようとしません。触覚過敏があるようです。小学3年生/女子 の保護者
全校児童が集まる集会の場などで、集会が始まる前の騒がしい時に両手で耳をふさぎます。
まだ一年生ですし実際騒々しい場なので、耳をふさいでいても今のところはそれほど変な目では見られませんが、じきに気づかれてしまうと思います。
聴覚過敏なところがあります。小学1年生/男子 の保護者
音に非常に過敏なため、外出先等では自動で水が流れるお手洗いに入ることができません。
不意に流れると、泣き出して飛び出してきてしまいます。
音が怖いと感じるようで、聴覚が過敏なんだと思います。小学3年生/男子 の保護者
音に対して特に敏感です。
弟が大声を出したり、物を叩いたりすると耳をふさぎます。
また、花火もダメなようで終始耳を押さえて塞ぎ込んでいました。小学1年生/男子 の保護者
いかがでしたでしょうか。
感覚過敏があるといっても、一つのことだけに過敏なお子さんもいれば、複数の感覚過敏を持つお子さんもいるようです。
ですが、どのお子さんも日常生活に難しさを感じていたり、辛い思いをしていることに変わりはありません。
周囲の大人や親はそのことを忘れずにフォローしていきたいですね。
親がその辛さを受け止め、共感し、対処法を一緒に考えていくことを続けていくと、少しずつ過敏症状が落ち着き、気にならなくなっていくものです。
具体的にはどういった対処法があるのでしょうか。
3. 感覚過敏の対処法は? 我慢させるのはNG
一番大切なことは、感覚過敏がある子どもを責めないことです。
「これくらい我慢しなさい」、「大げさなんだから」、「他の子はちゃんとできているよ」などの言葉は一切役に立たず、それどころか余計に子どもを追い詰めることになります。
周囲が感覚過敏に気づいたら、まずはそれを一緒に受け止め、怖さや困難さを代弁してあげることが大切ですね。
「怖かったね」、「大丈夫だよ、一緒にやってみよう」というように心に寄り添ったり、場合によってはその場面から離れたり、他の方法で挑戦してみることがおすすめです。
例えば、学校で行われる避難訓練の放送の音が苦手だとしたら、下記のような対処法が一般的です。
- 避難訓練があることを何日も前から話しておく
- 避難訓練はどんなことをしてどのような音がなるのか、大きさや音の種類など話しておく
- 訓練とは練習なので、怖がらなくても良いことを話す
- どうしても怖がるときは、避難訓練の時間はお休みさせるか、保健室や図書館などで過ごす
避難訓練のサイレンや、運動会のスタートのピストルの音、花火大会の音など、大きな音が鳴ってしまうことは実際に起こりうることですが、音の場合はイヤーマフを付けることも効果的です。
同様に、給食が食べられない、教室の黒板の周辺に掲示物が多すぎて集中できない、体育のジャージがどうしても着られないなど、学校生活には感覚過敏の子どもにとって強い刺激になりうるものがたくさんあります。
学校の先生とよく相談して、疲れすぎないよう解決方法を一緒に探してみましょう。
4. 感覚過敏を早期に軽減するためにも、まずはしっかり受け止めることが重要
親の立場としては、感覚過敏があると心配になりますよね。
この子は将来社会で生きていけるのだろうか、刺激に耐えていくだけになってしまうのではないかと思われることもあるかと思います。
ですが、感覚過敏は必ず軽減されていきます。
そのためには小さな頃から感覚過敏をしっかり受け止め対策すること、叱りつけたり無理をさせたりしないことが大切ですね。
子どもだけで解決することは難しいことなので、周囲とよく相談し、快適に生活できるようにしていきましょう。