発達障害の子どもが自立していくための支援である「療育」。
子どもが抱える生きづらさをやわらげ、保護者の悩みも支援する療育とは、どんなものがあるのでしょうか。
その種類や、受けられる場所など、発達障害の子どもを持つ親が知っておきたいことをご紹介します。
目次
1. 療育ってどんなもの?
「療育」とは、発達障害の子どもに限らず、障害のある子どもの自立を支援する取り組みのことです。
発達障害の子どもは、その特性により生活に困難があったり、周囲になじめなかったりすることがよくあります。
そのため、精神的にもつらい思いをすることもあるのです。
発達障害の子どもを持つ保護者も、子どもをどう支援していけばいいか、また、子どもの将来について悩むことも多いでしょう。
療育は、子どもだけでなく、その保護者も支援していこうとするものです。
療育によって、発達障害の特性がなくなることはありませんが、その子どもの特性や成長に合わせて、適切な支援をするのです。
その支援を通して生きづらさをやわらげ、自立へと導いていくことが目的です。
1−1.療育はどこで受けられるの?
療育を受けるには、療育施設に定期的に通うのが一般的です。
乳幼児健診の際に、療育施設を紹介されることも多いようですが、自分で調べる場合には、子育て支援センターや発達障害者支援センター、自治体の福祉課などに問い合わせてみましょう。
どんな施設があるのか、どんな支援が受けられるのかといった情報が得られるでしょう。
1−2.療育の内容は?
療育と一言で言っても、その内容はさまざまです。
子どもの成長に合ったものであることが大切なため、内容も変化していきます。
臨床心理士や作業療法士などの専門家と1対1で行われるものから、同じような特性を持った同年代の子ども数人で行われるもの、親子で参加するものなどがあります。
療育の内容は、社会生活を送るためのルールを学ぶこと、言語発達の支援、運動などが基本です。
【とある療育施設の1日のプログラム】
9:30 身支度(やることリストに沿ってカバンの中身を出し、所定の位置に置く等の支度をする)
10:00 グループ活動(運動、制作など)
11:00 個別活動(発達に応じた課題を1対1で行う)
12:00 食事(食事のマナーや道具の使い方を学ぶ)
13:00 自由遊び
13:45 身支度(やることリストに沿って、自分で帰り支度をする)
これはあくまでも一例で、1日の所要時間や内容もさまざまです。
2.療育にはどんなプログラムがあるの?
療育には、いろいろな種類があります。
実践されているものの中から、いくつかご紹介します。
2-1.TEACCH(ティーチ)
自閉スペクトラム症の人とその家族のためにはじめられたプログラムで、生活全般に関わるものです。
基本的な考え方としては、日常のさまざまなものを構造化し、見てわかるようにすることで、子どもが迷わず安心して過ごせる環境をつくります。
主な特長は、以下の通りです。
- 空間を構造化する:「ここは何をする場所であるか」ということを明確にし、空間を区切ります。決められた場所で、決められたことをすることで、子どもが安心できるようにします。
- 時間を構造化する:「いつ、何をすべきか」ということを明確にし、時間で区切ります。イラスト入りのスケジュール表を使い、今すること、次にすることをわかりやすくします。
- 手順を構造化する:物事の手順は、耳から聞いただけでは理解しづらいものです。「おそうじの手順」「朝の支度の手順」など、さまざまな行動をイラストや写真で構造化します。
2-2.感覚統合療法
感覚には視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚などがありますが、発達障害の子どもは、刺激と脳のはたらきを統合させることが困難な場合があります。
たとえば、他の子どもにちょっと肩を叩かれただけでも過剰に反応し、攻撃されたと見なしたり、花など優しく触らなければならないものも力加減がわからず強く握ったりしてしまいます。
感覚統合療法では、運動や体を使った遊びを通じ、五感や平衡感覚、そして体を動かすときの力加減などを指す固有覚のバランスを整えていきます。
2-3.ABA(エービーエー・応用行動分析)
子どもの行動を観察しながら、望ましい行動を増やし、問題行動を減らしていくにはどうしたらいいのかについて考え、子どもとの関わり方や環境を整えていくものです。
何度言っても子どもが問題行動をやめない場合、その問題行動やその後の関わり方が、行動を「強化」してしまっている可能性があります。
応用行動分析では、うれしいことや楽しいことは何度でも繰り返したい、つまらないことは減らしたい、という人間の心理を利用し、望ましいことをしたときには褒めて行動を「強化」し、問題行動をしたときには無視をして行動を「消去」していきます。
応用行動分析の考え方
-
- 嫌なことがあった→「我慢する」など望ましい行動をとれた→褒める→望ましい行動が増える(強化される)
- 嫌なことがあった→「かんしゃくを起こす」など問題行動をとった→無視する→問題行動が減る(消去される)
3. 放課後等デイサービスってどんな場所?
療育を受けられる施設の1つに「放課後等デイサービス」があります。
学童期の子どもの支援のために発足したサービスで、放課後や長期休暇の間に子どもを預かり、社会性の向上のための支援や学習支援を行います。
地域や施設ごとによってそのサービスは異なりますので、どんな支援を受けられるのかをまず確認してみましょう。
なお、放課後等デイサービスを利用するには、各自治体で「通所受給者証」を申請する必要があります。
4. まとめ
療育は、発達障害の子どもが生きていくうえで必要なスキルを学び、自分らしく自立していけるようサポートするもの。
適切な療育を受け、積極的に生きづらさを取り除いてあげたいですね。
療育は保護者にとって必要なサポートでもあるので、どんなものがあるのか、まずは相談してみましょう。