「限局性学習症」という障害を聞いたことがあるでしょうか。
全般的な知的障害がないにも関わらず、読む・書く・計算するということがうまくできない障害のことを言います。
自閉症スペクトラム症や、ADHDと併せて現れることもある発達障害のひとつで、以前は「学習障害」や「LD」とも言われていました。
今は名称が変わり「SLD」とも呼ばれています。
学習障害やLDの場合だと、勉強や学習全般に於いて、うまくできないまたは支障があると捉えられることが多いため、特定の学習にのみ苦手や支障があるということから現在は「限局性学習症」という名称になりました。
また、その他にも体のバランスや体幹が弱い「協調性運動機能障害」などの学習症もあります。
これらは小学生の頃に気づくことがほとんどで、勉強についていけないことから発覚します。
「限局性学習症」とはいったいどのような症状があるのか、また、発症の原因や治療方法などを探っていきましょう。
1. 限局性学習症の症状とは?
「限局性学習症」の主な症状は、3つ挙げられています。
- 言葉は理解しているが、文をすらすら読むことが困難
- 文字を書けない、または苦手
- 算数が極端にできない
それぞれ「読字障害(ディスレクシア)」「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュア)」と呼ばれていますが、これらを総じて「限局性学習症」と呼ばれています。
2. 限局性学習症が疑われるときは?
「限局性学習症」はその名の通り、学習面での困難を感じた際に疑いを持ちやすいため、小学校入学の頃にわかることがほとんどです。
例:8歳・男児の場合
幼稚園のときから絵本を読んだり、名前を書いたりすることができずにいた。
小学校へ入学してからも教科書が読めない、黒板の文字を書き写すのに時間がかかって時間内に終わることができない、算数の計算を繰返し教わっても理解できないなど、学習面の問題が浮き彫りになった。
発達の検査を受けられる病院で知能検査を受けた結果、学習障害があると判明しました。
この例のように、ほとんどの場合が未就学児の頃はまだ小さいからと症状を見落としがちですが、小学校へ入学するとすぐに学習の遅れに気付くことが多いです。
3. 限局性学習症の診断はどうなる?
診断については、専門の病院や知能検査を受けられる病院で、知能検査を受けることになります。
その結果から医師が診断を下します。
また、知能検査の他にも、CTやMRIで脳の病気に関する検査をしたり、読み書きや計算がどの程度できるかを検査したりすることもあります。
このように、様々な検査をすることで、障害のタイプや度合いも多角的に診断していきます。
4. 限局性学習症の原因は?
「限局性学習症」は発達障害のひとつですが、文字の読み書きや数字の理解に関わる脳の働きが十分に発達していないことによるものです。
環境要因としては、早産や低体重児出産の場合は、その発症リスクが高くなると言われています。
また、遺伝的要因もあると言われており、家族に限局性学習症の人がいた場合、その発症率は4~8倍、場合によっては5~10倍というデータがあります。
出典:医療法人ハートクリニック
5. 限局性学習症の治療はどうする?
治療方法や薬は特にありませんが、関わり方には十分な配慮が必要です。
限局性学習症のある子どもの場合は、自信がなく、二次障害に陥りやすいものです。
また、それに併せて自閉症スペクトラムやADHDなどの障害がある場合もあります。
勉強を理解していなくても理解しているふりをしてつまらなく感じたり、友達や先生の目を気にして学校にいきたがらなくなったりと、子どもの心の負担が大きくなります。
できないことを責めるのではなく、できることを認め、褒めることが大切です。
学習症がある場合は、苦手なことが多いですが、大人になってもその症状は続きます。
そのため、生きているだけでも大変に疲れてしまうことでしょう。
周囲はその気持ちにしっかりと寄り添い、励まし、認めることを忘れずに関わることが大切です。
文字を書くことに関して苦手があるのなら、タブレットを使う、タイピングを習得して書かなくても学習ができる方法にしてみる。
文章を読む際は、今読んでいる行に定規を当てて読むなどの工夫をする。
計算する際は計算機を使用する。
少しでも早い段階で、そのように適切な配慮や手立てが必要となります。
6. まとめ
限局性学習症について、症状や原因、そしてその対策などをご紹介しました。
知的な障害がないのに、学習することに苦手意識や困難を感じているということは、日々成長していく子どもにとってとても辛いことでしょう。
自信を喪失し、生きていくことが大変つらくなってしまうこともあるかもしれませんし、その上、わからないということをバカにされたり叱られたりすれば、立ち直ることすらもできなくなってしまうかもしれません。
少しでも心配がある場合は、早いうちに病院へかかって診断をしてもらうことです。
また、周囲の人間は、子どもは何が困難で、どんなことがわからないのかをしっかりと理解して受け止め、手を取って一緒に学習することが大切になります。
丁寧な関わりや、心のこもったフォローは必ず大人になった時の土台となり、困難が生じても力強く生きていけるようになるでしょう。