発達障害の子どもはコミュニケーションが取りにくいことがあります。そもそも発達障害とはどういった障害なのでしょうか。
“発達障害とは、発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。”
(文部科学省HPより:http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/hattatu.htm)
それぞれの障害によって異なる特徴がありますが、大まかには下記のような特徴があります。
- 言葉をはじめとするコミュニケーションが取りにくく、人との関わりが苦手
- 場の空気を読む、人と合わせることが苦手
- 予定の変更などに弱く慌てる、こだわりが強く興味や関心に偏りがある
- 感情的になりやすい
- 落ち着きがない
その人の抱える障害や年代、生活環境や成育歴によっても変わってきますが、発達障害を抱えていると、人とのコミュニケーションに困難さを持つ人が多く存在します。見た目ではわかりにくい障害のため、人からの誤解を受けやすく、学校や社会から孤立してしまう原因となり得るのです。
今回は、発達障害を抱える子どものコミュニケーション上の課題にスポットをあて、家族として何ができるかを探っていきましょう。
目次
1. 発達障害を抱える子どものコミュニケーションの特徴
まず、発達障害を抱える子どもは、コミュニケーション上どういった特徴をもっているかを知ることが大切です。生まれた頃から青年期頃までの子どもの特徴を見ていきましょう。
1-1 生まれた頃~
・寝ない、泣き止まない
お昼寝や夜なかなか眠れない、泣き出すと機嫌がよくならず一日中抱っこで過ごす日が続く、そんな状況が何か月も続くお子さんもいます。
・言葉が遅い、名前を呼んでも反応がない
名前を呼んでも振り向かず声掛けだけでは反応しない、肩をとんとんと叩くなどしないとこちらを振り向かない、普通の親子に見られるアイコンタクトがない、なんとなく心が通じていないような感じを受けるお子さんや、単語がなかなか出てこなかったのにある日スラスラと話し出すお子さんもいます。
・視線が合わない
名前を呼んで話しかけても視線が合わない、話はするけど目を合わせずに話すなど、少し違和感のある姿が見られます。
・言葉をオウム返しして真似し、会話になりにくい
話しかけると同じ言葉でオウム返しし、会話が成り立たないことがあります。成長と共に少しずつ減っていきますが、これも特徴的な姿です。
・大きな音、初めて行く場所、初めて会う人などに激しく反応しパニックを起こす
人見知りや場所見知りが激しく、泣いたり、パニックを起こしたり、その場所へ入ることを拒むこともあります。
就学前に市町村などで行われる発達検診では、名前を呼んだ時に反応があるか、視線が合うか、簡単な会話ができるかなどを検査し、そこで初めて子どもに違和感があると気づく保護者もいます。しかしながら年齢の小さなうちは、発達障害かどうかの判断はつきにくく経過観察となることが殆どです。
1-2 小学校~中学校
・クラスに馴染めず、人との関わりが苦手
友達と一緒に遊ぶことをせず一人を好み、また会話をしても自分のことばかり話す、だしぬけに話し出すなど、その年齢なりの関わりが難しい子どももいます。ストレートに伝えてしまうことで相手の怒りをかっても、その理由がわからずそのままトラブルへとつながることもあるでしょう。
こういった、馬鹿にされたり、仲間外れにされたりした経験が以後、人との関わりに対して苦手意識へつながることもあります。
・人の気持ちや場の空気を汲み取ることが苦手
人との関わりや社会的な振る舞いが自然に身につかない子どもが多くいるのも特徴です。人の気持ちを汲み取り、その場の空気に合わせて言葉や態度をわきまえることが難しいという特徴があります。
・時間割や行事の変更など、予定がかわることへ臨機応変に対応できず慌てる
前もって聞いていたことが変更になることで、対応しきれず慌てたりパニックになったりすることがあります。
・言葉は理解しているが、スムーズに会話ができない
単語や会話を理解してはいても、うまく使ってスムーズに会話をすることが難しい子どももいます。自分の気持ちを伝え説明をすることがとても苦手で、言葉がもつれる子どももいます。
1-3 中学校~青年期
この頃になるとさらに複雑に絡み合った人間関係や、コミュニケーション能力が求められ、困難の度合いが大きくなる人も増えてきます。
- 人の気持ちや場の状況を察するのが苦手
- 人や場に合わせた会話が苦手
- 時間の管理ができないため、約束などを忘れがち
- 片付けや物の管理ができず、失くしものや忘れ物が多い
- 思い付きのように話題がどんどんそれ、話がかみ合わない
それでは、発達障害を抱える子どものこういった姿には、どういった課題があるのでしょうか。
2. 発達障害によるコミュニケーション上の課題
中学校から青年期にかけて発達障害の子どもは、「自分勝手」、「気分屋」、「話しにくい人」などと周囲に言われたり思われたりすることもあります。これまでの辛い経験によりコミュニケーションに対して苦手意識を抱えてしまうため、後天的な困り感となっていることも考えられます。その後の社会不安へとつながることもあるでしょう。
課題を解決し、下記のようなことができるようになると、円滑なコミュニケーションを取れるようになります。
- 一方的に話してしまわず、時々相手の話しも聞くようにする
- 自己表現をし、自分の伝えたいことを分かりやすく相手に伝えられるよう練習する
- その場や相手にあった話題を自分からできるようにする
- マニアックになりがちな自分の知っていることをあえて抑えることも必要と知る
- 相手の良いところを見つけて言葉にして伝えるようにする
- わからない話しになった時、意識をそらさずに質問するなど積極的に参加する
このように、発達障害のある人にとって、難しく高度な課題が数多くあります。一見身につくのか不安に思いますが、周囲の理解と協力があれば少しずつ身につけていくことができます。
それでは周囲の大人や保護者、そして本人にどんなことができるのでしょうか。コミュニケーション能力向上のためにできることを考えましょう。
3. コミュニケーション能力向上のためにできること
発達障害を抱える子どもは”見て覚える”、”人のやり方を真似る”ことが難しい特性があります。そこで、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を通して社会的な振る舞いや人とのコミュニケーションを学ぶ、家族と学校でその日にあったことを振り返る習慣をつけていく、といったことが、コミュニケーション能力向上の手立てとなることでしょう。
その中で、
- 相手の気持ちをイメージすること
- 自分の気持ちを伝えること
- 相手の話しを聞くこと
- キャッチボールを心がけること
など、コミュニケーションの基本的なことを具体的に繰り返し伝えていきましょう。
発達障害の保護者や指導者向けのコミュニケーションや会話に関する本も多数販売されています。そういったものを参考にしながら、子どもの状況に合わせて教えて伝えていきましょう。
4. 発達障害を抱える子どものコミュニケーションに関するまとめ
発達障害の子どもの「コミュニケーション能力とはこれ!」という明確な答えはありません。ですが、いま子どもたちが関わる日本の社会では、周囲の空気を読み協調することと、自分をアピールする社交性の両方が求められています。
発達障害の子どもにとって、とても難しいことですが、人と関わることが嫌いになったり、怖くなったりしてしまわないよう、周囲が繰り返し温かく適切なサポートを続けていくことが大切です。
コミュニケーション能力の向上は、何年も長い年月がかかるものです。あきらめず、感情的にならず、長い目で見ながら一緒に成長していきましょう。