何となくコミュニケーションが取りにくい、いつも落ち着かない、忘れ物が多い…。そんな時、「もしかしたら発達障害やADHDなのかも」と思うことがあるかもしれません。少しでも早く知っておけば、対策や対応を変えて良好なコミュニケーションを取ることができます。
今回は、「ADHDかもしれない…!」と思った時、どのような対応をしたら良いのかも含めて、チェック方法をご紹介します。
目次
1. ADHDのチェックはいつ行うべき?
子どもがADHDかもしれないと感じた時
自分の子どもの様子を見て、「もしかして発達障害があるかもしれない」と思った時、専門機関や病院へかかる前に、どういった症状や特性があるのかを把握しておくことができると、医師もスムーズに診察を進めていけます。専門機関や病院へかかる前に、ぜひ1度チェックしてみてください。
大人になってから自分自身がADHDかもしれないと感じた時
自分自身が社会に出て、人とのコミュニケーションで辛さや困難を感じた時、ぜひチェックしてみましょう。多くのチェック項目が当てはまれば、専門機関や病院へかかることをおすすめします。
2. ADHDの原因はそもそも何?
感情や行動をコントロールする脳の前頭前野の機能に偏りがあることが原因と言われています。また、遺伝や心理社会的要因も関係しているのではないかと言われていますが、詳しい原因についてはまだ解明されていません。
3. ADHDのチェックリスト
このチェックリストは、ADHDや発達障害が疑われる人に対して医師が質問する項目です。チェックすることで、日ごろの生活を思い返し、困難の傾向を把握することができます。チェックリストには子ども用と大人用の2種類があります。
子どものチェックリスト
- お子さんは、速やかにベッドから起きられますか?
- お子さんは、速やかに身だしなみ(洗顔・歯磨き・洗顔など)を整えることができますか?
- お子さんは、朝食時に年齢相応の行動ができますか?
- お子さんは、朝の登校前に兄弟や家族と、トラブル・言い争いなく過ごせますか?
- お子さんは、学校へ行くのが好きですか?
- お子さんは、授業中に他の子どもたちと同じように行動できますか?
- お子さんには、学校で受け入れてくれる友達がいますか?
- お子さんは、学校の出来事を保護者に伝えられますか?
- お子さんは、同年代の友達はいますか?
- お子さんは、同年代のお子さんと一緒に、スポーツをするなどの課外活動に自信を持って参加できますか?
- お子さんは、家で問題なく宿題ができますか?
- お子さんは、両親の帰宅後言い争いをすることなく家庭生活を送ることができますか?
- お子さんは、夕食の時に落ち着いて会話ができますか?
- 両親はお子さんと、安心して共に行動(外出や買い物など)をすることができますか?
- 青年期のお子さん(12歳以上):お子さんは、同年代の友人との遊び、勉強、塾、習い事、スポーツなどの活動を夜に行えますか?
- 小児期のお子さん(12歳未満):お子さんは、夜に親の指示に従うことが可能ですか?
- お子さんは、問題なくベッドに行く(眠る)ことができますか?
- お子さんは、夜中に目覚めることなく寝ていますか?
- お子さんは、自信があり、社会に受け入れられ(友人の中に居場所があるなど)、情緒が安定していますか?
- お子さんは、混乱、言い争い、反抗的行動なく過ごせる日の方が多いですか?
大人のチェックリスト
- 物事を行なうにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか?
- 計画性を要する作業を行なう際に、作業を順序だてるのが困難だったことが、どのくらいの頻度でありますか?
- 約束や、しなければならない用事を忘れたことが、どのくらいの頻度でありますか?
- じっくりと考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることが、どのくらいの頻度でありますか?
- 長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることが、どのくらいの頻度でありますか?
- まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることが、どのくらいの頻度でありますか?
以上がADHDかもしれない人の状態を詳しく関係機関や医師に伝えるのに活用される、チェックリストです。このチェックリストに当てはまるからと言って必ずADHDというわけではなく、医師に診断をしてもらう際の情報のひとつになるものです。
4. ADHDグレーゾーンの存在
ADHDのチェックを行い、医師や専門機関で診察をしてもらってもはっきりとした診断名がすぐにつくとは限りません。本人だけではなく、本人と関わる親や周囲の人がお互いにコミュニケーションなどに困難を覚えることで発達障害やADHDの診断がつくこともあります。
そのため、診断がつくまでに時間がかかり、また、はっきりとわからないことも多く、「ADHDかもしれないし違うかもしれない、軽いグレーゾーン」という診断が存在します。
5. ADHDの治療はどうする?
ADHDは病気ではなく、脳の機能の偏りによる脳障害です。そのため根本治療をする方法はありません。しかし、ADHDを持つ本人の特性を理解し、生きづらさを改善し、自信を持って充実した生活を送ることができるよう、周囲が支援していくことは可能です。また、お薬を使った治療もあり、根本治療にはなりませんが、本人の特性や困り感を軽減するために非常に有効です。
環境調整
子どもが不快になったり落ち着かなくなるような感覚刺激を減らしたり、物事に集中しやすい環境を整えます。例えば、視野に入る掲示物を減らす、テレビや音楽をかけないなど勉強に集中しやすい環境にすることで、集中して学習することができ、自信も高まります。
ペアレント・トレーニング
ADHDのお子さんを持つ保護者のためのプログラムで、ADHDの子どもの特性を理解し、より良い関りを学ぶためのものです。叱られることや注意を受けやすいADHDの子どもは自己肯定感が下がりやすく、うつ病など二次障害を引き起こすことも多く報告されています。一番身近である保護者がADHDの子どもへの理解を深め、適切な支援とかかわりをすることが大切な治療のひとつになります。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
ADHDを持つ本人が、社会生活を送るために必要な集団の中でのふるまい、会話、気遣い、心構え、気持ちのコントロール、人との距離感などを学ぶプログラムです。ADHDの子どもは人の様子を見て覚える、習慣づけるということが非常に難しいところがあります。難しい言葉を使い、人とのおしゃべりを楽しむことはできても、年齢相応の常識を持ち合わせていないことも多く見られます。個々に合わせて、「本当は言わなくてもわかる」ことを、言葉にして伝えていく必要性があります。
お薬による治療
脳内の神経伝達物質の伝わりを増やし、かつ伝わりやすくするお薬などがあります。個々の状態や年齢によって処方される薬は変わるので、医師の診断が必要です。
6. まとめ
ADHDをはじめ、発達障害ははっきりと目に見える障害ではないため、診断が非常に難しい障害です。そのため、成長と共に感じる保護者の育てにくさ、本人が感じる周囲とのコミュニケーションの取りにくさなどからADHDの診断がつくことがほとんどです。
ADHD当事者を見るだけではなく、周囲との関わりから生まれる「困り感」について、小さなうちは保護者がしっかりと観察し、冷静に見つめること、病院へかかる前に記録を残し、セルフチェックしておくことが大切です。
ADHDといっても、症状や特性は様々なので、チェックリストだけで自己判断せずに専門機関にかかることをおすすめします。本人の特性を理解し、関わり方を心得れば、本人も周囲も楽しく自信を持って生活を送ることができます。落胆せずに、より良い方法を見つけていきましょう。