発達障害の子どもは、「収集癖」があることがあります。自閉スペクトラム症によく見られるものですが、何かを集めることに執着し、すべて集めなければ気がすまないのが特徴です。マイナスにとられてしまいがちなこの特性ですが、うまく活かすことで、勉強習慣を身に着けているケースがあるようです。その事例を見ていきましょう。
目次
1. 収集癖がある子どもの特徴は?
自閉スペクトラム症の特性の1つとして上げられる「収集癖」。カードや電車の切符など収集するものはさまざまですが、中には意外なものを収集したがるケースもあります。なぜこのような特性が出てくるのでしょうか。
1-1 規則正しいものが好き
発達障害でなくても、収集欲のある人は多いでしょう。「マンガを全巻集めたい」、「切手集めが趣味だ」など、人それぞれです。しかし、発達障害の場合、道端に落ちている石やゴミなど、一般的に価値のないものを集めたがることもあります。また、それをすべて集めなければ気が済まず、自制できないため、お金や保管スペースなどを考慮せずに集め続けてしまいます。ここには、自閉スペクトラム症の「規則正しいものが好き」という特性が影響しているようです。何事も完璧に、規則に沿っていなければ気がすまない子どもにとって、コレクションが1つでも欠けていることは許せないことなのです。
1-2 ルールを納得させることが大切
多くの場合、集めたものをアルバムに入れたり、棚に並べたりしてコレクションしたがります。膨大な数になり、保管場所の問題が出てくることが多いのですが、無理にやめさせたり、勝手に処分したりするのは禁物です。他の人からは価値がないように見えても、本人にとっては宝物のようなもの。改めさせる必要があれば、しっかりと話をし、納得させることが大切です。
たとえば、
- お手伝いをしたお小遣いで、1ヶ月に1つだけ買ってもいいと決める
- この棚がいっぱいになったら終わりだと言い聞かせておく
- 古いものは写真を撮ってから処分する
- 実物を購入しなくても、ネットで画像を印刷すれば見られることを教える
など、集めているものによって家庭でルールを決めることが大切です。
2. 収集癖を勉強習慣に結びつけたAくんの事例
このような収集癖を勉強習慣づくりに役立てているケースを見ていきましょう。
自閉スペクトラム症と診断されているAくんは、eラーニング教材「すらら」を使って勉強しています。
Aくんのお母さんによると、Aくんは、「すらら」のユニット(学習の1つの区切り)の最後に出てくる「まとめプリント」が気に入っているようです。パソコンの画面を印刷するのが好きで、学習した後はそれをファイルにまとめているそうです。
「すらら」のまとめプリントの例(小学校高学年の国語)。その日学んだことのポイントがすぐにわかるようになっています。
また、「すらら」に出てくるキャラクターも好きなようで、こちらも印刷しては、キャラクターだけのファイルも作っています。ランダムに出てくるキャラクターをコンプリートしようと、勉強をがんばっているようです。
「すらら」の「ログインスタンプ」。さまざまなキャラクターが登場するので、Aくんはすべてのキャラクターを集めるためにがんばって勉強しているそう。
「すらら」の詳しいご紹介に関しましては、下記記事をご覧ください。
3. ルールを決めて家庭学習の習慣をつくろう
このように、教材そのものを好きになり、収集癖と勉強のモチベーションが一緒になることがベストですが、必ずしもうまくいくわけではないでしょう。その場合も、家庭内でルールを決めるのがおすすめです。
3-1 コレクションできるものを勉強のご褒美にする
発達障害の子どもの勉強によく取り入れられている方法としては、「ご褒美シール」や「ご褒美スタンプ」があります。シールやスタンプそのものを収集することに子どもが喜びを感じてくれたらいいのですが、そうでなくても「シールを20枚貯めたら○○を買っていい」など、家庭で決まりごとをつくるといいでしょう。
勉強すれば、収集欲を満たすことができるという決まりがあると、子どもは安心できるのです。
3-2 しっかりした学習計画をつくる
自閉スペクトラム症の子どもは、「決められたスケジュールを繰り返したがる」という特性を持っていることも多いようです。収集癖もある場合は、この2つを結びつけることで、学習習慣がより身につきやすくなるでしょう。
- 16:00~17:00は勉強の時間
- 月水金は国語、火木は算数をやる
- 毎日宿題とドリルを1ページやる
など、子どものペースを考慮しながらしっかりした学習計画を立ててあげましょう。そのうえで、「今日の勉強が終わったからシールを貼る」など、きちんとご褒美もあげるようにします。
4. 収集癖のある子どもの勉強に関するまとめ
このように、マイナスにとらえられがちな発達障害の特性も、特徴を理解して上手にサポートすることで“強み”へと変えていくことができます。
発達障害であるかないかに関わらず、子どもが学習習慣を身に着けることは容易なことではありません。しかし、「収集癖」が良い方向にはたらけば、だれよりも勉強する子になる可能性もあるのです。
「収集癖」を学習に活かすことができる教材については、下記記事をご覧ください。