成績のいい子どもに共通していることといえば、「保護者が勉強に積極的に関与している」ということです。
子どもの学力を伸ばすため、日々いろいろな情報を探したり、良さそうな教材を試したりしているという保護者も多いことでしょう。
そういったことも、もちろん関与していることになりますし、教材や勉強法を見つけるのは大切なことです。
しかし、それでも成績が伸びない場合、親の関わり方を改めて見つめてみることをおすすめします。
今回は、子どもの学力を最大限に伸ばすといわれている「スキャフォールディング」というサポート方法をご紹介します。
目次
1. 「スキャフォールディング」はなぜ効果があるのか
まずは「スキャフォールディング」という言葉の意味と、どのように学力アップに結びつくのかを見ていきましょう。
1-1. 「スキャフォールディング」とは
「スキャフォールディング(Scaffolding)」という言葉には、「足場かけ」という意味があります。
勉強がわからなくなったときに「じゃあ、ここで辞書を引いてみようか」とか「教科書のこの部分を読んでみようか」というように、問題解決のための方法を示す(足場をかける)ことを言います。
「スキャフォールディング」の目的は、最終的に1人で問題解決できる力を身につけさせること。
足場を徐々に外していく(サポートすることを減らしていく)ことで、子どもは次第に自力でゴールに到達できる力を身につけていきます。
そうやって習得した勉強法は、さまざまな教科の問題に応用できるため、学力を底上げすることができるのです。
1-2. 子どものIQはアップする可能性がある!
WISCやK-ABCなどの知能検査を受け、子どものIQを調べたという人もいることでしょう。
※知能検査について詳しく知りたい方は下記記事を合わせてご覧ください。
しかし、ロシアの心理学者レフ・ヴィゴツキーによって提唱されたZPD(zone of proximal development/最近接発達領域)の考え方によると、IQは変わっていく可能性もあるようです。
ZPDというのは、学習において、子どもが1人でできることと、他者の力を借りることによって習得できることのズレを意味します。
このズレは、近い将来、子どもが1人でできるようになるという発達の可能性を示しており、子どもの「伸びしろ」とも言えるものです。
レフ・ヴィゴツキーは、この伸びしろまでを含めて子どものIQだと提唱しています。
今、子どものIQが低いからといって、そこで学ばせることをやめてしまえば、子どもの学力アップは望めません。
保護者の関わり方や、勉強法、教材やツール次第で、子どもの能力を引き出してあげられるのです。
2. 家庭学習で「スキャフォールディング」を実践するには
それでは、家庭でどのように「スキャフォールディング」を実践していけば良いでしょうか。
その方法と注意するポイントをご紹介します。
2-1. 「スキャフォールディング」のやり方
「スキャフォールディング」を実践するには、子どもが勉強しているすぐそばで見ている必要があります。
無学年式オンライン教材「すらら」の小学校低学年の国語の学習画面を例に見てみましょう。
(例)
「わからない言葉はあるかな? 一緒に辞書で調べてみようか」
「誰がノーベル文学しょうを受しょうしたって書いてあるかな?」
「文章の最初に、“だれが・どうした”が書いてあるんだね」など、正解へたどり着くまでの足場かけをしてあげます。
足場かけ例
- 一緒に文章を読んでみる
- 一緒に辞書を引いてわからない言葉を調べてみる
- 文章の内容について話をする
- 理解できていない部分の前段階に戻って一緒に考えてみる
- 子どもが正解にたどり着けるよう導き、できたら褒める
次に同様の問題が出た場合は1,2だけにするなどして足場を減らし、最終的には1人でできるようにしていきます。
2-2. 「スキャフォールディング」の失敗例
「スキャフォールディング」は、あくまでも子どもが1人でできるようになるためのサポートです。
そのため、“保護者がやってあげる”というのは望ましくありません。
中には教科書やノートを開いてあげたり、文房具を用意してあげたりするところまでやってしまう人もいますが、それは甘やかしであり、「スキャフォールディング」とは違うということを覚えておきましょう。
保護者が問題解決の方法を示してあげ、それをやるのはあくまでも子ども自身であることが大切です。
2-3. 「スキャフォールディング」の加減の仕方は?
保護者がやりすぎてもいけないし、足場が少なすぎても正解にたどり着けない……。
「スキャフォールディング」は、その加減がとても重要です。
最初は足場をたくさん用意し、子どもが自然に回答できるくらいがいいでしょう。
そして子どもができたときに褒めてあげると、それは子どもの成功体験になります。
そこから、少しずつ足場を引いていき、子ども自身が考える部分を多くしていくのがポイントです。
子ども自身に考える力を身につけさせる「スキャフォールディング」は、子どもがどんな風に考え、どこでつまずいているのかを見極めること。
ずっとそばについているのは時間的にも大変かもしれませんが、できるだけ一緒に勉強してサポートしてあげてください。
子どもの学力を今よりぐんとアップさせてあげられる可能性があります。