水泳、ピアノ、書道など、子どものために習い事をさせているという保護者は多いでしょう。
しかし、始めてしばらくすると、子どもが習い事をサボりたがるという声をよく聞きます。
子どもはなぜ習い事をサボりたがるのでしょうか。
また、そんな時、保護者はどうしたら良いのでしょうか。
今回は、行動療法的な観点から、習い事をサボりたがる子どもへの対処法をご紹介します。
目次
1. 習い事をサボりたがる子どもの様子を観察してみる
保護者から実際に寄せられたお悩みに答える形で対処法をご紹介していきたいと思います。
「電車に乗って習い事に通っているのですが、家を出る直前になって行き渋り、毎回時間切れになって欠席してしまいます。
スムーズに習い事に行かせるにはどうしたらいいでしょう?」
この場合の子どもの心理と行動をよく考えてみましょう。
家を出る直前になって駄々をこねるのは、「いま駄々をこねれば、電車に間に合わなくなるから行かなくてよくなる、サボれる。」ということを知っているからと推測できます。
毎回同じ行動パターンを繰り返していることからも、下記のような思考回路になっていることでしょう。
↓
直前に駄々をこねたり癇癪を起こしたりする
↓
行かなくて済む・サボれる
このように、「直前に駄々をこねる」という行動が子どもにとっての“良いこと”、“ご褒美”になってしまっていることがわかります。
駄々をこねればいいことがあるのですから、この行動は強化されてしまっているのです。
これを変えていくには、「駄々をこねる」ことがご褒美にならないよう、別の何かを課していく必要があります。
たとえば、習い事をサボった分、家でみっちり1時間勉強するといったことです。習い事をサボるともっと大変なことをしなければならなくなると学ばせることが重要です。
同時に、「習い事のための宿題や練習をきちんとやった」、「習い事に出かける支度を自分でした」、「時間通り電車に乗ることができた」など望ましい行動ができた場合は、それをしっかりと褒めて強化していく必要があります。
2. 習い事をサボりたがる理由を探ってみる
子どもが習い事を嫌がったとき、「いいから行きなさい!」と叱るのは簡単ですが、なぜ子どもが嫌がっているのかという理由も探っていきましょう。
(1)その習い事に興味がないから
(2)習い事の先生と合わないから
(3)習い事の友だちとうまくいっていないから
(4)習い事のスピードについていけないから
(5)宿題や練習をしていないから叱られると思っているから
(6)行き渋ることでお母さんに注目してほしいから
(7)習い事をするより、家でゲームをしていたほうが楽しいから
などなど。
子どもに「どうして行きたくないの?」と聞いて答えてくれるならいいのですが、自分でも理由がわかっていないこともあります。
子どもとの会話から理由を探り、それに対してどうするかを考えていく必要があるでしょう。
習い事を無理に続けさせないという選択肢もある
(1)の場合は、そもそもその習い事を続けさせる意味があるのか考えてみる必要があるでしょう。
子どもが興味を持てる別の習い事があるなら、そちらに変更したほうがいいかもしれません。
(2)(3)(4)の場合は、先生とも相談し、解決策を考えましょう。
場合によっては、同じ習い事でも別の教室に変えたり、グループレッスンを個別レッスンに変えたりすることが必要になるでしょう。
(5)の場合は、子ども自身が宿題や練習をする習慣を身に着けるのは難しいので、親が横につきながら、時間をとって宿題や練習をさせていきましょう。
きちんとできたら褒めて、行動を強化することも大切です。
(6)の場合、お母さんに注目して欲しいという子どもの願望が隠れています。
いいことをしてもあまり褒められないし、注目してもらえないので悪いことをしてお母さんの注意を引こうとしているのです。
たとえ叱られても、子どもにとって「注目=ご褒美」になるのです。
強化したい行動をしたときには思いっきり褒め、減らしたい行動をしたときには無視をするのが効果的です。
(7)の場合、先ほど述べたように、習い事に行かないことがご褒美にならないよう、別の何かを課していく必要があります。
ゲームなどの遊びの時間はしっかり時間を決めて守らせましょう。
3. 行動療法で望ましい行動を増やす
このように、子どもが習い事をサボりたがる理由によって対処法は異なります。
「駄々をこねる→習い事に行かなくて済む」という風に、知らず知らずのうちに保護者が望ましくない行動を強化してしまっていることもあります。
保護者ができる対処法のヒントとしては、行動療法でよく用いられる「ABC分析」が参考になります。
(出典:カウンセラーウェブ)
ABC分析では、行動を「A:状況(Antecedent)」、「B:行動(Behavior)」、「C:結果(Consequence)」の3つに分けて見ていきます。
B:行きたくないと駄々をこねる
C:行かなくて済む
という流れだと、Bの行動でCが導かれることを子どもは学んでしまいます。
Bの行動を変えさせるには、Cからアプローチする方法とAからアプローチする方法があります。
3-1. CからのアプローチでBの行動を変える
まずCからのアプローチですが、無理やりにでも習い事に連れて行ったり、もっと子どもが嫌がる結果(1時間家で勉強するなど)を課したりします。
思い通りにいかないので、子どもはもっと激しく駄々をこねるかもしれません。しかし、保護者が折れてしまうと、「激しく駄々をこねれば思い通りになる」と学んでしまうので、毅然とした態度で臨みましょう。
渋々でも習い事に行けたら、「えらいね!」と褒めることで、望ましい行動を強化することができます。
3-2. AからのアプローチでBの行動を変える
次にAからのアプローチですが、出かける少し前に「今日は15時になったら習い事に出かけます。わかりましたか?」と、子どもに確認し、了承させます。そして、きちんと行くことができたら思いっきり褒めます。
このように、A(状況)、B(行動)、C(結果)の流れを分析し、望ましい行動を増やして行く工夫をしましょう。
自分から進んで習い事へ行くというのは理想ではありますが、そんなにうまくいかないのが現実でしょう。
習い事をサボりたがる子どもの思い通りにするのではなく、子どもの心理を分析し、保護者が行動を変えていく必要があります。
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