「うちの子は他の子より繊細かも」、「些細なことで傷ついてしまう子にどう接したらいいかわからない」、「子どもが周りの目を気にしすぎてしまうようだ」など、人一倍繊細で、傷つきやすく、人付き合いも苦手な子どもに悩んでいる人はいませんか?
心の病気かも、何か障害があるのでは……など、不安になる気持ちもわかりますが、それはもしかしたらHSCという特性かもしれません。
近年、日本でも話題になっている、HSCとはどんなものなのか解説していきたいと思います。
目次
1. HSCは子どもの生まれ持った特性の1つ
HSC(Highly Sensitive Child ハイリー・センシティブ・チャイルド)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
大人も含めてHSP(Highly Sensitive Person ハイリー・センシティブ・パーソン)と呼ばれることもあるものですが、まずはこのHSCとは何かを見ていきましょう。
1-1. HSCは病気でも障害でもない
HSCとは、アメリカの心理学者・エイレン・N・アーロン博士が1996年に出版した本で提唱した概念で、生まれつき感受性が強く、敏感な人を指します。
2006年にこの本の日本語訳が出版され、日本でもHSCが知られるようになりました。
アーロン博士によると、社会の中で15~20%の比率でHSC、HSPの人がいるそうです。
HSCを理解するうえでもっとも重要なのは、この敏感さや繊細さは、病気でも障害でもなく、単に生まれ持った特性によるものだということです。
のんびり屋の子、せっかちな子といった性格の特徴のほか、運動が得意な子、歌が上手な子といった特性と同じで、「感受性が強く、敏感な子」というだけの話なのです。ただ、当事者にとっては困ることも多く、「どうしてこんなに些細なことで傷つくのか」、「いつもクヨクヨしていて、どんな言葉をかければいいかわからない」など、子どもを理解できないことに悩む母親も多いでしょう。
1-2. こんな特性があったらHSCかも
アーロン博士によると、以下のような特性があった場合、HSCの可能性があるそうです。
<HSCのチェックリスト>
- すぐにびっくりする。
- チクチクするような服、くつ下の縫い目、肌に触れる襟元のタグなどをいやがる。
- サプライズしてあげてもほとんど喜ばない。
- 厳しい罰を与えるよりも、優しく間違いを正す方が言うことをわかってくれる。
- わたしの気持ちをよく察するように感じる。
- 年齢の割には難しい言葉をつかう。
- ほんのかすかな匂いにも気がづく。
- 優れたユーモアのセンスをもっている。
- 直感力が優れているように思える。
- 興奮したことがあった日はなかなか眠れない。
- 大きな変化にはうまく対応できない。
- 服が濡れたり砂で汚れた時は着替えたがる。
- 質問を山のようにぶつけてくる。
- 完璧主義なところがある。
- 他人の苦しみによく気がつく。
- 静かな遊びが好き。
- 深い示唆に富む質問をしてくる。
- 痛みにとても敏感。
- うるさい場所を苦にする。
- 微妙なことによく気がつく(何かものを移動させた時や、人の外見の変化などについて)。
- 高い場所に上る前に、安全かどうかじっくり考える。
- 知らない人がいると、一番良い時の実力を発揮できない。
- ものごとを深く感じとる。
13個以上の項目に当てはまるようであればHSCの可能性が高いですが、個人差があり、1個や2個でも強く当てはまればHSCと呼んでもいいかもしれません。
チェックリスト参考:http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsc.html
1-3. 不登校になってしまうこともある
HSCの子どもは、人付き合いが苦手な傾向があります。
友だちや先生の顔色を常に伺ったり、嫌われたくない気持ちが強いあまりに自分を出せなかったりして学校になじめないことも多いでしょう。
対人関係で悩み続けた結果、不登校になってしまうこともあります。
子どもが学校に行けないことは、親にとって大きな問題です。
しかし、HSCの子どもは、サボりたくて学校を休んでいるわけでも、わがままを言っているわけでもありません。
無理にでも学校へ行かせるというのではなく、子どもが何に対して不安を抱いているのか、何がストレスになっているのかなどをじっくりと聞きだす必要があります。
子どもは、自分が感じたことをうまく言葉にすることができません。
何が原因なのか自分自身もわかっていないことも多いのです。
そのため、人知れず苦しんでいるのですが、その苦しみに一緒に向き合う姿勢が必要になります。
1-4. 病院では発達障害と診断されることもある
子どもの繊細さを心配した親が、病院に連れていくことも多いようです。
ただ、日本の小児科や精神科では、「自閉スペクトラム症の傾向があります」など、発達障害の診断をされてしまうことも多いようです。
そもそもHSCは病気でも障害でもないので、“診断される”ということがありません。
また、医師の中にもHSCのことをよく知らなかったり、方針として重視していなかったりすることもあります。
発達障害の特性と照らし合わせてみて、違うかもしれないと思ったら、保護者のほうがHSCを疑ってみる必要があります。
2. HSCの子どもにどう接したらいいの?
先ほども述べたように、HSCは病気や障害ではなく、特性であるため、決まった治療法があるわけではありません。
しかし、周りの人の接し方によって、生きづらさを改善していくことはできます。
2-1. 特性を「長所」、「才能」だと考えてみる
長所と短所は裏返しです。
同じ子どもでも、見方を変えれば長所にも短所にもなるのです。たとえば、
- 計画性のない子→行動力のある子
- 自己主張の強い子→積極的な子
- 優柔不断な子→柔軟性のある子
など。
このように考えると、HSCの繊細さや敏感さも長所や才能として捉えることもできるのです。
人一倍敏感なのは、人とは違う視点で世界を見ることができるということ。
傷つきやすいのは、他の人の痛みにも気付いてあげられるやさしさをもっているということなど。
そんな風に、見方を変えて、その長所や才能を伸ばしてあげることができれば、自分に自信がつき、マイナスの要素がなくなっていくかもしれません。
本や映画をたくさん見せてあげたり、美術館で芸術に触れたり。
子どもの感受性の強さを伸ばしてあげてください。
2-2. 勉強が遅れている場合は勉強法を工夫する
HSCの子どもは、不登校だったり、その特性のせいで勉強に集中できなかったりすることがあるかもしれません。
とくに、集団授業になる学校では、人目が気になり「間違ったらどうしよう」、「先生に当てられたくない」など不安が強くなっていることも考えられます。
学校の勉強についていけていないなら、家庭学習で学力を伸ばしてあげる方法を考えていきましょう。
パソコンやタブレットを使ったオンライン教材なら、家にいながら自分でしっかり勉強していくことができます。
オンライン教材を選ぶときは、講義がしっかりしている教材であることが前提ですが、オンライン教材の多くは講義だけ、あるいはドリルに特化していたりと、その教材だけで完結できないものが多いです。
さらに、無学年式で過去の学年にさかのぼって学習できることも重要ですので、これらを兼ね備えた教材を探すことをおすすめします。
3. まとめ
子どもだけでなく、自分もHSC・HSPに当てはまると思った方もいるかもしれません。
そのくらい、HSC、HSPの人は社会に多く、人ごとではないのです。
特性を長所や才能と捉え、少しずつポジティブに、生きやすくなるように工夫していきましょう。