「発達障害の子どもが高校に進学するけど、学校探しはどうやったらいいの?」という悩みを持つ保護者は少なくありません。
成長につれて子どもの学習の場は変化していきますが、小・中学校では通級指導教室や通級学級、特別支援学級など、子どもの発達の程度に合わせた支援体制が制度化されています。
しかし、高校は学校ごとに違った特徴があるため、自分たちで高校の特徴を把握して子どもの特性に合わせた学校を選ぶ必要があります。
そこで今回は、高校を選ぶ際のポイントや、受験の際に受けることができる配慮を紹介します。
目次
1. 発達障害の子どもの高校選びはなぜ難しい?親が学校について調べる必要がある
発達障害の子どもの教育では、それぞれの子どもの状況に合わせた進路や学習環境を選んであげる必要があります。
高校を選ぶ場合も同じですが、小・中学校と比べて学校選びが難しくなることが多いようです。
発達障害の子どもの高校選びが難しい理由をみてみましょう。
1ー1 学校ごとの支援体制や特徴を調べる必要がある
小学校や中学校では、子どもの支援の必要性に応じて、支援体制が分けられていました。
そのため、療育の専門家に支援について相談すれば、自分の子どもにあった環境を選ぶことができました。
※小中学校の就学先のタイプについては、「アスペルガー症候群の学校選びはどうする?就学に関する疑問を解説」で詳しく解説しています。
しかし、高校では支援の体制や方針が学校ごとに異なります。
そのため、学校の特徴をしっかりと調べて、自分の子どもに合っているかどうかを判断する必要があります。
しかも、普通科高校は発達障害の受け入れ可否や支援内容などを公表していないケースが多く、入学してから支援が不十分であることに気づくというケースもあります。
1−2 学校ごとの支援体制に差がある
発達障害や不登校の子ども向けにカリキュラムを作っている通信制学校や、個別に学習支援を行うサポート校であれば、発達障害の子どもに合わせた学習が可能です。
しかし、公立高校や、特別なカリキュラムを用意していない私立高校では、支援体制が不十分であることも少なくありません。
子どもがそのような学校への進学を希望している場合は、学校の支援体制をしっかりと調べる必要があります。
1−3 子どもの自我が強まる
高校進学を考える頃には、子どもに自我が芽生え、これまでより強く「自分の希望」を持つようになります。
保護者が子どもに支援体制の充実している学校を勧めても、子どもは仲の良い友達が希望する学校を選んだり、通信制学校より公立高校を希望したりして、保護者と子どもの意見に食い違いが起こることも考えられます。
そのため、今までより更に時間をかけて子どもと意見をすり合わせながら、高校を選ぶことが必要になります。
2. 発達障害の子の高校選びに重要なことは?3つの重要ポイントをチェック!
発達障害の子どもの高校を選ぶ場合に大切なポイントは、下記の3点が挙げられます。
- 具体的な支援内容の確認
- 将来の進路にあっているかを確認
- 子どもの意見とのすり合わせ
それぞれについて具体的に紹介していきます。
2−1 学校種別ごとの支援内容の確認
進学先の学校の具体的な支援内容をしっかり確認しましょう。
学校の種別ごとに次のような違いがあります。
公立高校(学年制)
1〜3年の学年別にカリキュラムや必要単位数が決められており、それぞれの学年で単位数を取得することで進級できます。
発達障害に関する支援を公表している学校は少ないため、どの程度支援が受けられるのかしっかりと調べる必要があります。
私立高校(学年制)
公立高校に比べ、特徴的なカリキュラムが存在します。
学年制の私立高校は公立高校と同様に、発達障害の子どもに対する支援を大々的に公表していないことが大半です。
しかし、専門的な科目を学ぶことができる高校も多く、子どもの興味に合わせた選択肢が多くなります。
ただし、公立と比べると学費は高くなります。
通信制学校
通信制学校は発達障害の子どもの特性を考慮した特別なカリキュラムを用意していることがあります。
登校や単位取得のペースも幅広く、発達障害の子どもが学習しやすいような支援が充実している学校も多いです。
ただし、学年制の学校とは通学ペースとは異なるため、子どもにそれを理解してもらう必要があります。
サポート校
サポート校は通信制学校だけでは十分に学習できない部分を個別に学ぶための支援を行う学校です。
サポート校だけでは高卒認定を受けることはできませんが、発達障害の子どもの学習状況をより良いものするために必要な支援を受けることができます。
特別支援学校
小学校、中学校における特別支援学校の役割と同じように、専門的な視点からのサポートがあり、発達障害の子どもが学習支援を受けることが可能です。
以上のように、学校の種別によって大きく特徴が違いますが、同じ種別の学校でも、それぞれの学校に特徴があります。
2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、発達障害の子どもに対して学校側が個別支援を行うための工夫をすること(合理的配慮)が義務づけられましたが、支援の程度はまちまちです。
2−2 支援内容を確認する際のポイント
支援内容を確認しようにも、保護者の力だけでは難しい部分もあります。
そこで、以下のようなポイントを参考に、学校で受けられる支援内容を確認してみましょう。
※合理的配慮については、「合理的配慮と発達障害>意味と具体的な事例を紹介!」でわかりやすく解説しています。
専門家の意見を聞く
高校進学に関する情報に詳しい専門家に意見を聞くことは非常に参考になります。
発達支援学校などで開催されている進学相談会に参加して、進学に関する助言を受けることもできます。
支援学級からの入学歴の有無を確認
過去の支援学級などからの入学歴の有無を確認することで、発達障害の子どもを受け入れる体制がどの程度整っているのかを知る目安になります。
説明会などに積極的に足を運ぶ
学校説明会は様々な学校の情報を入手するいい機会です。
複数の学校が合同で実施する説明会もあるので、中学校や放課後等デイサービスなどの先生から情報をもらって参加してみましょう。
2−3 将来の進路像と合っているかを確認
高校を選ぶ際に親子で考えておきたいことは「高校卒業後の進路」です。
「高校選びなのにその先なんて…」と思われるかもしれませんが、高校への進学はその先の将来につながる重要な選択になります。
卒業後に子どもがどのような社会生活を送るのかを考えて、高校で学ぶべきことや身につけておくべきことを選択し、高校選びの指標の1つにしましょう。
2−4 子どもと意見をすり合わせる
高校選びにおいて、子ども本人の意見はとても重要です。
入りたくない学校に無理やり入れたり、保護者の意見を優先したりすることは、発達障害の子どもにとって大きな精神的ダメージにつながります。
もちろん、子どもの意見を一方的に受け入れるわけではありません。
子どもからその学校に行きたい理由を聞き取り、子どもの希望に添いながら、将来や障害の程度に合わせた学校選びを手助けしてあげるようにしましょう。
3. 高校受験で受けられる配慮とは?事前申請が必要なので要注意
高校進学には「受験」が必要です。
せっかく志望校を選んでも、受験のことを思うと不安になることも少なくないでしょう。
しかし、発達障害であることを伝えておくと、受験の際にも一定の配慮を受けることができます。
どうすれば配慮が受けられるのか、具体的にどのように配慮してもらえるのかをご紹介します。
3−1 配慮を受けるには事前の申請が必要
受験時に配慮を受けるためには、受験する学校に対して事前に準備、申請をすることが必要になります。
- 医師の診断書の提出
- 個別の支援計画(校内の試験でどのような配慮をしていたかがわかるもの)の提出
- 受験する学校と在籍している学校との間での協議
これらの準備と申請が済んではじめて、受験時の配慮が受けられます。
3−2 受けられる配慮の内容
配慮の内容は受験する生徒の障害の特性によって変わりますが、以下のような例が挙げられます。
- 別室での受験
- 時間の延長
- 問題用紙の拡大
- 漢字などへのカナふり
- 問題文の読み上げ
障害者差別解消法の施行により、公立高校に上記のような配慮が義務付けられました。
しかし、これらの配慮はまだ十分に普及しているとは言いがたく、保護者によっては受験に不利になると思い申請を遠慮するケースもあるようです。
これから徐々に制度が浸透していけば、配慮の事例も増えてくるはずので、学校の先生などから情報収集をするようにしてみてはいかがでしょうか。
※「合理的配慮」の意味と具体的なじれいについては下記記事をご覧ください。