発達障害の1つであるADHD(注意欠陥多動性障害)は、「多動性」「不注意」「衝動性」が特徴的な症状とされています。
ADHDの特性を持つ女の子は、同じADHDの男の子よりその特性が見つかりにくいと言われています。
女の子の特性が見つかりにくいのはなぜなのか、ADHDを持つ女の子に周囲の人間がしてあげられる支援について考えていきましょう。
目次
1. ADHDの3つの特性とは?個別に症状が現れることも
ADHD(注意欠陥多動性障害)には、大きく分けて3つの特性があります。
3つの特性は以下の通りですが、これらがすべて症状として現れるとは限りません。
1−1 多動性
- じっとしていられず、授業中に立ち歩いてしまう
- 座っていても常にそわそわしている、姿勢が悪い
- 一方的に話してしまい、喋りだすと止まらない
- 話の内容がコロコロと変わる
1−2 不注意
- 忘れ物、なくし物が多い
- 整理整頓が苦手
- いつもボーッとしている
- 周りの環境に左右されて集中できない
- ケアレスミスが多い
1−3 衝動性
- 知っていることをすべて口に出してしまう
- 列に並ばず、割り込みしてしまう
- 物事に優先順位をつけられない
2. 女の子のADHDはなぜ見つかりにくい?ADHDの女の子に多い特徴を確認!
ADHDの子どもの中には、男の子も女の子もいます。
では、なぜ女の子のほうが見つかりにくいと言われているのでしょうか。
2−1 ADHDの子どもは女の子のほうが少ない?
女の子は、男の子に比べてADHDの罹患率(りかんりつ)が低いことがわかっています。
発達障害などの精神疾患の診断基準として用いられているDSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)の第5版では、ADHDの子どもの男女比は2:1とされています。
ADHDの男の子は女の子の2倍いることになりますが、大人になると男女比が1.6:1となり、男女の差は縮まります。
つまり、年齢を重ねてからADHDだと診断される女の子が多いということです。
これが意味しているのは、ADHDの特性の現れ方が男女で異なり、現状の診断基準では幼い女の子のADHDが発見されにくいということなのです。
2−2 ADHDの女の子によく見られる症状
ADHDの女の子には、下記のような症状がよく現れるとされています。
- 空想にふけることが多い
- 他の子どもに比べて、作業が遅い
- 先生の話や質問の意味を理解できないため、授業中に指名されるのを怖がる
- 言いたいことがあっても、自分から言い出せない
- 机の上や机の中、持ち物を整理整頓することができない
- 宿題を忘れてしまう、宿題にとりかかるのが遅い
- よく遅刻をする
- 他の人の行動に気を取られて集中できない
- 友達グループに入りたくても、どうしたらいいかわからない
- みんなで盛り上がっている話題についていけない
- 時間への意識が薄く、食事を忘れたり、何時間もゲームしていたりする
- 叱られても、なぜ叱られているのかがわからないことがある
2−3 女の子のADHDは、周囲の見守り方が大切
ADHDの女の子は、恥ずかしがり屋だったり、内気だったり、ボーッとしがちだったりします。
症状だけを見ると、一般的によくあるものに見えますね。
女の子のADHDは、「多動性」「衝動性」よりも「不注意」の症状が多く現れる傾向があります。
「不注意」の症状だけでは周りの人を困らせることが少なく、ADHDの発見が遅れてしまうのかもしれません。
ADHDというと一般的には多動性や衝動性のイメージが強く、落ち着きのない子、元気いっぱいの子、おしゃべりな子と思われがちですが、そうではない子もいるということを意識しておかなければなりません。
ADHDの早期発見、早期支援はその後の子どもの人生の「生きづらさ」を軽減することにつながります。
少しでも気になる症状があれば、子どもをよく観察し、どんなことに困っているのかを見極めて支援へとつなげましょう。
発達障害の子どもを支援するためには、障害を理解することが第一です。
ADHDを学ぶにあたり、男女で現れる症状が違うことがあるという点は頭に入れておきましょう。
参考:『イラスト図解 発達障害の子どもの心と行動がわかる本』田中康雄(西東社)
所長ブログ「女性のADHDは見過ごされやすい」